千葉県ナースセンターは、看護部長の経験がある就業相談推進アドバイザー(以下アドバイザー)によるきめ細かな再就業支援を行っています。実際にどのようなことを心がけているのか、千葉県看護協会常任理事の福留浩子さん、事業部第二課課長の伊藤幸子さん、そしてアドバイザーの小谷美千子さん、四宮一二三さん、藤枝純子さんに伺いました。
千葉県看護協会では看護職員の定着・確保のためにまず実態調査を独自に企画し、力を入れているとうかがいました。

福留 看護職に長く働いていただくことが極めて重要だと考えています。当協会では『質の高い医療・看護を提供するため 看護職が働き続けられる職場づくりの推進』を目標に、看護職の定着確保対策の基礎資料にするために毎年実態を把握し、「第4次看護職定着・確保対策推進計画」を策定しました。計画に基づき様々な取り組みを行っています。実態把握は具体的に、「看護管理者、未就業求職者、新卒者を対象に定着確保動向調査」と「看護職の再就業者実態調査」とに分けて実施しています。
定着確保動向調査でポイントとなってくるのは、やはり離職率ですね。例えば、2016年度の調査では、専門看護師や認定看護師が所属している施設では離職率が低い傾向にありました。新人の離職率は400床以上の大規模病院に比べると、中小規模の病院は高く、教育体制などの仕組み作りが構築しきれていないことが原因と考えています。そこでナースセンターとしては、求職者の再就業支援はもちろんのこと、中小規模病院への支援にも力を入れていく必要があると考えています。
伊藤 そこで、アドバイザーがeナースセンター登録施設を中心に施設訪問を行っています。医療施設等に足を運んで雰囲気や状況を実際に把握するというイメージですね。施設から集まる求人情報や施設概要は限られた内容であるため、アドバイザーとして求職者に対して十分な情報提供をするためには、現場で得られた「生きた情報」が欠かせません。
インターネットでは分からないことを伝える
四宮 実際に施設を訪問してみると、事前情報から想像していた感じと全く違う印象を受けることも少なくありません。例えば、「パート採用」と書いてあっても、その人数、就業状況、業務内容、どんな人がどんな様子で働いているか……といった具体的な部分は、それぞれ違ってきますよね。また、院内のトイレや看護職の休憩室の状態などの実情もあります。こうしたインターネット上では得にくい情報を交えながら就業相談に応じることで、復職率や定着率にも良い影響が出ると考えています。
小谷 私が注意深くチェックするようにしているのは、施設のロケーションですね。千葉県は縦長の半島に位置しており、東京都心に近く交通の便に優れる地域から、田畑が広がり車での移動が基本になる地域まで、バリエーションに富んだ土地柄が特徴です。そのため、通勤時間はどれくらいか、どんな交通機関が利用できるか、周囲にどんな施設があるかといった部分を求職者は知りたがっています。実地の情報を求職者にお話しすると、「実際に見てきたんですか!」と驚かれ、喜ばれることも少なくありません。

藤枝 加えて重要なのが、各施設の看護部長さんの思いをきちんと聞くことですね。私たちアドバイザーも看護部長経験者ですから、その看護部長さんのやろうとしていること、そこに込められた思いはよく理解できます。共感したり励ましたりしながらお話を重ねる中で、「勇気づけられました」という言葉をもらうこともあります。
実際に施設訪問することで、求職者には簡単に得られない、それでいて本当に必要な情報を入手しているわけですね。では、その情報をもとに求職者の相談に乗るときは、どんな点に気を付けていますか?

四宮 「ブランクがあって技術に自信がないから、とりあえず外来で……」というように、消極的な理由で再就職先を選ぼうとする方もいます。そうした方については、技術研修への参加を提案するとともに、再就職先を選ぶに当たっての優先順位を一緒に考えていくようにしています。その方のキャリアや家庭の状況などをじっくりと聞き取りながら、「何を最も大切にしたいのか」を明確化していくわけです。
藤枝 再就職は、新たなライフステージに一歩踏み出すことを意味します。大きな環境変化を伴いますね。その際にどんな課題があって、それをどう解決していくのかという点については、一人で考えていても煮詰まってしまうことが多いです。特に、自身の課題を整理したうえで、中長期的な視点を持ってキャリアを考えることはとても難しい。私たちの仕事は、そうした部分をお手伝いする看護職の自立支援という側面も強いのかもしれません。
福留 その意味でも、ナースセンターから地域に出向く合同就職説明会、ハローワーク出張相談、再就業支援セミナーや、ナースセンター内で実施する看護基礎技術講習会等も、それぞれアドバイザーがかかわるなかで、参加者が思いを言葉にでき、一歩踏み出す力になることは大きいです。また、同じ立場の人同士で悩みを共有でき、参加者同士の交流が図られ、励ましあう場面もありました。そのような場を提供し、環境を整えていくこともナースセンターの役割ととらえています。
今後取り組みたいことや、看護職の皆さんへのメッセージがあればお願いします。

伊藤 先ほど「千葉県はバリエーション豊かな土地柄」という話がありましたが、看護職の就職という面でも地域によって大きく状況が違っています。例えば、東京都に近い地域では都内への流出がある一方で、逆に流入も激しく、常に人が動いています。また、外房周辺部はそもそも退職者が少なく、辞めたとしても「次はあの病院」とすぐに地域内で再就職先が決まるパターンが多い。だからこそ、私たちも各地域の実情に沿った支援を心がける必要があるわけです。
そこで今後開催を検討しているのが、中小規模病院の看護管理者交流会です。地域ごとに大きく状況が異なる中で、各施設は様々な工夫を凝らしながら看護職を募集し、定着の支援をしています。しかし、それらの取り組みを他の施設と共有したり、相談できたりする場がほとんどありません。ナースセンターがその役割を担い、同時に私たちも情報収集ができればと考えています。
福留 看護職の皆さんには、届出制度のこと、そしてナースセンターのことをもっと知ってほしいですね。届出制度ができた当初、この制度を皆さんに分かりやすく伝えるにはどうしたらいいだろうと職員で知恵を絞りました。そのひとつが、マンガを使って宣伝することでした(ナース届出物語)。やはり文字だけの情報に比べると目に入りやすく、とても好評でした。余裕があれば、続編も作ってみたいですね。
精緻な調査に加えて、アドバイザーがキャリアと人間力で得た求人施設の「生の情報」を求職者に提供することで、最適なマッチングにつなげるのが当ナースセンターの自慢です。ぜひ、看護職の皆さんにナースセンターを積極的に活用していただき、後悔のないキャリアを築いてほしいと思っています。

千葉県ナースセンター
〒261-0002 千葉市美浜区新港249-10
TEL 043-247-6371
https://www.cna.or.jp/about/nurse-center/index.html
●センターの主な事業内容
(1)看護職員の定着・確保に係る実態調査
(2)看護職の無料職業紹介
(3)届出制度(とどけるん)
(4)未就業看護職の就業支援
(5)ナースセンター事業の広報
(6)看護職への相談支援
(7)看護進路相談
(8)訪問看護基礎研修会(訪問看護ステーション見学体験事業)
●センターで今一番注力している事業
・再就業支援強化事業:2015年10月の離職看護職の届出制度化を受けて、
就業相談推進アドバイザー(看護部長経験者)を複数名雇用し、再就業支援体制を強化した。
・ナースセンターにおける看護基礎技術講習会
・県内5カ所のハローワークにおける就業相談
・地域における合同就職説明会
・実効性の高いマッチングを図るための求人施設訪問
・就業支援セミナー
●今後行いたい取り組み
・プラチナナース対象の研修
・中小規模病院の看護管理者交流会の開催
※プラチナナースとは、熟練したスキルを持つ定年退職した看護職や、近く定年退職を迎える看護職(特に病院勤務でキャリアを積んだ看護職)のこと。
●離職者へのメッセージ
ナースセンターの存在を知り、積極的に利用してください。復職の意向について、「すぐ」「いずれ」「未定」と回答、あるいは空白のままで届出された方には、就業相談推進アドバイザーが電話やメールで連絡しています。再就職に向けての相談にも応じています。往復はがきによる就業状況確認、研修会やイベントのご案内なども行っています。
●その他のアピールポイント
・就業相談推進アドバイザー(看護部長経験者)による求人施設および求職者への具体的支援



