新たな道を探る看護職へ様々なサポートを提供する奈良県ナースセンターは、自らを「看護職のお助け隊」と呼んでいます。看護職に寄り添う思いを、奈良県看護協会専務理事の西田豊美さん、奈良県ナースセンター部長の中村恭美さん、ナースセンター職員で心理相談員の小田由美子さんに伺いました。

求職者へのコンタクトはスピード感を大切にしているそうですね。

「長く勤められるよう調整するのがナースセンターの役割です」とナースセンター部長の中村恭美さんは話す

中村 基本的に「とどけるん」や「eナースセンター」に登録された当日か翌日、遅くとも1週間以内にはファーストコンタクトを取るようにしています。第一歩を踏み出した本人の熱が冷めないうちに連絡することが、再就職への後押しになると思うからです。電話でお話を伺いながら、「臨時職員がご希望なら、このような求人が出ています」「まだオンラインには載っていませんが、こんな情報もありますよ」などとお伝えするうちにマッチングに至り、最短では登録した当日に再就職先が決まった人もいました。

小田 求人施設にも、新規に登録いただいた際には確認の連絡をしています。登録情報に不足がある場合などは、双方で同時にパソコン画面を開きながら丁寧に入力のサポートをしています。アクセスや福利厚生、働き方など、求職者が知りたい情報を漏らさず掲載することで、「働いてみたいな」と思えるような「生きたページ」にすることが大事なのです。こうして誠意を持って対応するうちに施設の担当者との信頼関係が築かれ、いつの間にか採用に関する悩みを相談されるようになることもあります。

西田 復職を考えたとき、やみくもにインターネットで検索してマイナス情報ばかりが目に入り、気落ちしてしまう…というのはよくあることです。だからこそ、eナースセンターに求人施設の情報を過不足なく、求職者に分かりやすく掲載し、魅力をアピールできるようにすることで、求職者にとって信頼できる情報源となることを重視しています。

復職支援研修はキャンセル待ちが出るほどの人気だそうですね。

中村 当センターの復職支援研修は、離職中の方だけでなく、非常勤の方も対象になります。18日間35講座の中から、自分の受けたい講義や実技講習を好きなだけ選んで参加できるスタイルです。全講座を受講しても、気になる講座だけでもOKということで、自由度が高いのが特徴です。特に2017年度は開講前から多数の申し込みがあり、定員を若干増やして開講する講座や、キャンセル待ちの講座もあります。
 講義だけでなく実習の自由度も高く、協力施設から実習先を選択できるほか、実習を行う時期や日数も受講者の希望で調整できます。実習は5日間行うのが基本ですが、2日間だけにしたり、4施設を1日ずつ体験したりといったことも可能です。希望する施設が協力施設の中にない場合でも、ナースセンターから依頼して実習を受け入れてもらい、そのままそこへ就職した人もいるので、上手に活用してほしいですね。

相談員の小田由美子さんは「自分がどんなことをしたいのかを決めてから見学に行けるように相談では心がけています」と話す

小田 講師の多くが認定看護師であることに加え、脳卒中リハビリテーションがテーマなら在宅医療に携わる理学療法士、介護保険ならケアマネジャー、口腔ケアなら在宅医療の経験豊富な歯科医師といった、現場に精通した講師から学ぶことができます。また、研修で用いるオリジナルの資料はかなりボリュームのある、講師が精選した現場で役立つ情報を盛り込んだものです。就職した後も「いつも働きながら見直しています」という声が聞かれます。復職支援研修を受講すれば、自信が付くというだけでなく、就職先へのアピール材料にもなりますから、ブランクの長い人も積極的に参加してほしいと思います。失業保険の求職活動実績にもなります。

中村 研修中に、ランチョンプレゼンテーションを開催する日もあります。昼食の時間に3カ所の実習施設の担当者が来て、施設の紹介をしてくれます。求職者は「私は病院じゃないとダメ」「人数の多いところじゃないと無理」といった固定観念から、就職先の選択肢を狭めてしまいがちです。しかし、プレゼンテーションを聞くことで未知の分野や視野に入っていなかった施設の長所を知ることができ、例えば「こういうフォローがあるなら、訪問看護ステーションもいいな」というように、求職者の視野が広がっていくのです。求人する側も求職者の声を聞けるよい機会になっているようです。

小田 求人施設から、履歴書にプリクラの写真を貼ってきたり、面接時にふさわしくない服装を選んでしまったりする人もいると聞きます。そうした就職活動のマナーを基本から学んでほしいとの思いから、面接・履歴書の書き方講座も復職支援研修に盛り込んでいます。
 また見学や面接を設定したときにも、当センターの職員がマナーや質問のコツなどを具体的に伝えるようにしています。たとえ見学であっても、施設の方から「見られている」という意識を持つことが欠かせません。ただ見学するだけではなかなか就職には結びつきません。自分がどんなことをしたいのか、そのために何が知りたいのかを決めてから見学に行けるように、相談では心がけています。

「こころの健康相談」も行っていますね。

小田 心理相談員として担当しています。仕事や職場の人間関係についての悩みが中心となりますが、その背景にどんな事情があるかを丁寧に聞き取り、ケースごとにきめ細やかな対応が求められます。クリニックでの治療を経てそろそろ職場復帰というときに、同じ看護職に相談することで自分自身を見つめ直すことが必要だと医師がナースセンターを紹介してくれる場合もあります。
 私たちの仕事は、せっかく持っている能力を生かしてその人らしく働ける場所はどこなのか、様々な可能性を本人と一緒になって考えていくことです。たとえ精神的なトラブルを抱えていたとしても、転科や転職によって看護職を続けられている方が実際に何人もいらっしゃいますからね。

看護職が働き続けるためのサポート体制は万全ですね。

中村 私たち相談員の一番の願いは、仕事を求める看護職が自身に合ったところへ就職することです。どんな働き方をしたいのか、給与や年金など経済面に対する希望はどこまでか、どんな看護を提供することが理想なのか、家族を含めたライフスタイルをどう考えるのか…といったことを含め、面接では1人当たり1~2時間をかけて検討しています。ただ求人情報を紹介するのではなく、たとえ難しい問題を抱えた方であっても、長く勤められるよう調整するのがナースセンターの役割です。相談者の顔を見て、相談者の話を聞いたうえで、最も能力を発揮できる現場はどこなのかを考えながら紹介しています。
 ナースセンター以外にも、奈良県女性センターやハローワーク奈良、ハローワーク大和高田でサテライト相談を行っていますので、どうぞ気軽にご利用ください。

「困ったり迷ったりしたときはナースセンターを頼りにしてください」と話す奈良県看護協会専務理事の西田豊美さん

西田 奈良県内の病院数は78施設とそれほど多いわけではありませんが、かえって私たちの目が届きやすいとも言えます。各病院の看護管理者と接点を持ち、ナースセンターの事業にご協力いただく機会も少なくありません。委員会などで看護協会にいらした看護部長から、「この前にナースセンターの紹介で就職した人、頑張っていますよ!」などと声をかけてもらうこともあります。各施設とつながりが強いからこそできるアフターフォローなど、きめ細かく手厚いサービスを提供できるのが当センターの強みだと言えるでしょう。
 長い人生の中で、看護職としても1人の人間としても、困ったり迷ったりすることは誰にでもあるはず。そうしたときこそ、「看護職のお助け隊」であるナースセンターを頼りにしてくださいね。


奈良県ナースセンター
〒634-0813 奈良県橿原市四条町288-8
      奈良県看護研修センター1階
TEL:0744-25-4031
http://www.nara-kango.or.jp/nur-01.html

●センターの主な事業内容
(1)ナースバンク事業(求人・求職斡旋)
(2)復職支援事業:講義=2017年6月~2018年1月(18日間/年)、
          実習=2017年8月~2018年2月
(3)ナースセンター機能強化事業
・とどけるん登録制度
・こころの健康相談
・ミニ就職相談会、交流カフェ
・看護学校等進学ガイダンス
・ハローワーク連携事業
・サテライト相談(ハローワーク奈良、ハローワーク大和高田、女性センター)
・看護学校の学生へのナースセンターのPR
(4)看護の心啓発・普及事業

●センターで今一番注力している事業
(1)ナースバンク事業について
・eナースセンター求職登録者に登録後、ただちに電話・メールでコンタクトを取る。
・eナースセンター新規求人登録施設や新規求人票作成施設に対して、記載漏れのないよう確認、登録内容の充実を図る。
・求人施設の登録について増加を図る。
・eナースセンター求職登録者・求人登録施設の登録の重複を整理する。
・県内ハローワークへの看護職の来所者に、ナースセンターの案内チラシを配布する。
(2)復職支援事業について
・最新の看護についての講義や実技講習を実施する(選択受講可能、講師の多くが認定看護師)。
・協力施設での実習(1~5日間)を実施する:
 損害賠償保険のみ自己負担(今年度は1550円/2カ月)。
・講義実施時の過半数の日程で、ランチョンプレゼンテーションを実施する(3施設/日)。
・昼食時に職員が参加者にナースセンターのPRを行う。
(3)ナースセンター機能強化事業について
・とどけるん登録者へ、登録後ただちに電話・メールでコンタクトし、復職支援研修やミニ就職相談会カフェの案内を送る。
・こころの健康相談の研修会を実施する。
・ミニ就職相談会・交流会カフェを地域密着型で実施(3回/年):交流会では復職支援研修を受講後に就職した看護職の体験発表、求人・求職者との意見交換会、個別相談と採血の技術演習を行う。
・進学相談(看護学校・通信制)を実施する。

●今後行いたい取り組み
・県内病院などのガイドマップを作成し、ホームページへの掲載
・eナースセンター登録求職者に現状を確認するアンケートを実施(有効な求職登録者への案内につなげる)
・求人登録施設を増加させるために、登録の方法についての説明会を開催(事務長会などを利用)
・高校の進路指導者と保護者を対象とした進学説明会を開催
・進学ガイダンス時に奨学金を支給する病院のプレゼンテーションを開催
・看護協会の催しや地区支部等と連携したナースセンターのPR

●離職者へのメッセージ
・届出をされた方は、住所・氏名・メールアドレスの変更の際は、必ずご連絡ください。
・ナースセンターから電話やメールがあったときは、できるだけご対応ください。
・届出の入力において、学校の教員や行政職として就業中など転職希望がない方は、その旨の記載をお願いします。
・少しでも再就業を考えている方は、ぜひeナースセンターの登録についても「希望する」を選択してください。

●その他のアピールポイント
・県内の78病院や訪問看護ステーション、介護施設等の県内の情報の多くを把握しながら、本人の状況(ライフスタイルによる働き方、通勤時間等)を考慮して就職を斡旋している。来所相談・電話においても時間をかけ、長く勤務できる場を提供しています。
・進学相談においても、学校の選択、奨学金、本人の適正も踏まえ相談に応じています。
・こころの相談はメールや来所等で対応し、継続的に相談に応じる中で、就職にも結び付けています。

PageTop