津駅西口から南に向かって三重県庁の先、三重県看護研修会館の別館にある三重県ナースセンター。大きな窓から日差しがあふれる温かな雰囲気の中で、県内の看護職を応援するため日々どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。三重県看護協会常任理事の若尾典子さん、ナースセンター長の古田昌子さん、ナースセンター相談員の山路恭子さんにお話を伺いました。

毎朝、新聞のチェックを欠かさないそうですね。

「研修初日と最終日とでは、受講者の顔付きがまるで違ってきます」と話すナースセンター長の古田昌子さん

古田 新聞広告や折り込みチラシなどで地域の医療施設の開院・閉院をいち早くキャッチするのが目的です。特にクリニックの情報はなかなかダイレクトに入ってきませんから、普段から通勤途中に開院を知らせる看板を探したり、開設準備中の場所を見つけたりすることを心がけています。開業したクリニックの医師には機関紙「ナースセンターみえ」を届けるなどして、当センターの存在や活動内容を認知してもらうようにしています。地道な働きかけですが、求人施設の開拓には効果的なのです。
 また、既存の医療・介護施設に直接足を運ぶ機会も増やすようにしています。例えば、求職者の施設見学にはできるだけ同行、施設の現状や勤務環境などを把握し、求職者に常に正確な情報が伝えられるようにしています。ナースセンターの職員が同行することで隅々まで案内してもらえ、また給与に関することなど本人には聞きにくい部分を代わって質問したりも出来るので、求職者には心強いと言ってもらっています。

三重県看護協会常任理事の若尾典子さんは「県内の医療・介護施設とは顔の見える関係が構築できているという実感があります」と話す

若尾 医療・介護施設の訪問ということでは、看護職員確保定着のための巡回訪問事業として、2016年度までの3年間で県内の病院と施設124カ所を延べ199回訪問し、看護職の就業の実態を調査しました。勤務環境に課題が見られた施設には3回4回と訪問して、管理者育成や教育体制強化の提案、平等性を担保するシフト作成や業務分担についてのアドバイスなど、様々な支援を行っています。各施設で看護管理者の悩みに寄り添ううちに自然と顔なじみになりますから、後に求人・求職のことで連絡を取るときにも、お互いに何かと融通が利きます。県内の医療・介護施設とは、顔の見える関係が構築できているという実感があります。

求職者とのやり取りはどのように進めていくのですか。

古田 「とどけるん」に登録した方へ1カ月以内に電話やメールでファーストコンタクトを取り、eナースセンターへの利用者登録をご案内しています。
 どのような勤務形態を希望するかについては、「夫の扶養範囲内で働きたい」「雇用保険の加入要件(週の所定労働時間20時間以上など)を満たす働き方をしたい」「社会保険の加入要件(週の所定労働時間30時間以上など)を満たす働き方をしたい」という3段階に分けて把握しています。
 日本看護協会のワークライフバランス推進事業が2011年に開始されて以降、県内の医療施設の意識もだいぶ変わってきて、短時間勤務も受け入れるような柔軟な勤務体制が整いつつあります。子育て世代の復職希望の方には追い風が吹いている状況なので、「週2~3日程度しか働けない」「土曜日は出勤できない」という人もあきらめずに相談してほしいですね。私自身、2017年の春までは病院の看護管理者でしたが、ナースセンターからの紹介だと聞くと、「ナースセンターから紹介された方なら間違いないから」と安心して採用していたものです。

「復職したらそれで終わりではなく、安心して働き続けていけるようサポートしています」と話す相談員の山路恭子さん

山路 就業相談では、必要な研修を案内したり、希望する施設の見学も調整します。
 また、当センターを通して再就職した方については、就職から1カ月半くらいまでの間に、電話で話をして状況を確認しています。再就職していった皆さんからは、「〇〇さんとお話ししたいです」と、相談員を名指しして電話をもらえるような関係性が築けていてうれしく思います。「復職したらそれで終わり」ではなく、その後も安心して働き続けていけるよう、スタッフ一丸となってサポートしています。
 四日市のサテライトでは土曜日・祝日も相談を受け付けるほか、県内9カ所のハローワーク(桑名・四日市・鈴鹿・津・松阪・伊勢・伊賀・尾鷲・熊野)では「移動就職相談会」を実施しているので、利用しやすい窓口で気軽に相談していただけたらと思います。

潜在看護職等復職研修を受講した人の再就職率はかなり高いようですね。

古田 潜在看護職等復職研修を今年度は津・松阪・四日市の3地区で開催していますが、いずれの受講者も再就職率は高いです。今年9月に津会場で開催した研修の受講者は全員就職の見込みです。「研修を受けてみたけどやっぱり無理…」とマイナスの気持ちになってしまった人は、今まで1人もいません。研修を受けることで、看護に対する熱い気持ちが蘇ったり、自信を取り戻したりする効果が大きいのだと思います。それを知っているからこそ、受講に向けて皆さんの背中を押すことが、私たちの基本姿勢です。
 実際、研修初日と最終日とでは、受講者の顔付きがまるで違ってきます。講義3日間、実習2日間の研修をやり遂げることで、抱いていた若干の不安が払拭され、「よし、やるぞ!」「早く現場に戻りたい」という気持ちが表情にも現れてきます。

若尾 ナースセンターでも、シミュレーターモデルを使った採血や輸液ラインの接続の実習、DVDでの喀痰吸痰手技学習などを、予約不要で随時行うことができます。相談に来た際に技術実習を受けることができるのです。
 また、訪問看護師養成研修も行っています。国が在宅医療を推進する中、どこで働くかという看護職の視野が広がってきているため、受講希望者はとても多いです。勤務しながら参加する方が多いため訪問看護ステーションでの実習の調整が大変ですが、受講者の数だけ実習のかたちもあると考え、一人ひとりの状況に合わせて調整しています。

就業相談以外にも、多彩な相談事業に力を入れていますね。

古田 「就業環境改善相談窓口」(TEL 059-225-1180)では職場環境に関する悩みなど、「看護110番」では看護にまつわる心配事や困り事などについて、幅広く相談を受け付けています。

若尾 また毎年5月に開催される「みえ看護フェスタ」では、看護進路ガイダンスや進学相談も行っています。県内の看護専門学校や大学が一堂に会する唯一の機会で、毎回盛況です。三重県社会福祉協議会と共催する看護・介護・福祉の就職相談会も年に3回あって、そこへ進学相談に見える方も多いです。将来について心配なことがあれば、学生のうちからナースセンターとコンタクトをとって不安を解消してほしいと思います。
 私たちの願いは、相談者が就職・再就職できることだけでなく、その施設に定着して活躍してもらうことです。経験豊富な相談員がお手伝いしますので、まずは一歩を踏み出してください。

三重県ナースセンター
〒514-0062 三重県津市観音寺町字東浦457-10
       三重県看護協会看護研修会館別館
TEL 059-222-0466
http://www.mie-nurse.or.jp/nurse_center

●センターの主な事業内容
・ナースバンク事業:求人・求職相談
・看護の心普及事業:「みえ看護フェスタ」の企画・運営、「1日看護体験」の実施、
「看護の出前授業」の調整
・届出制度「とどけるん」の普及啓発
・看護職のWLB推進事業
・潜在看護職等復職研修事業
・在宅医療推進研修事業
・病院看護実態に関する調査
・ハローワーク移動就職相談事業
・「ナースセンターみえ」の発刊

●センターで今一番注力している事業
 ナースセンター事業の柱である看護職の就業支援に力を入れています。求職者の就業支援では、ご本人の希望に沿うことはもちろんですが、相談員の豊富な経験知を生かし、「復職と定着」のお手伝いができるよう相談対応しています。
 よりベストなマッチングを行うためには、求人施設登録を増やすことも重要です。2017年度は三重県庁医師・看護師確保対策班のご協力により、診療所の医師が参加する地区別の社会保険集団指導の機会を利用し、ナースセンターの業務紹介と求人登録依頼を行っていただきました。
 また、ハローワーク移動就職相談会を県内9カ所で、延べ61回実施予定です。毎日、新聞広告などに目を通し、医療施設等の開院・閉院情報を収集し、求人登録を更新するようにしています。新規求職登録者数を増やす取り組みとしては、届出登録情報を1カ月単位でまとめたリストを作成し、電話やメール等で届出者と連絡を取り、届出者の同意を得た上でeナースセンターの求職登録をお願いするようにしています。
 県の委託事業である潜在看護職等復職研修は毎年県内3カ所で開催し、離職期間の長い看護職の復職においても実績を挙げています。2017年度には、三重県ナースセンターの公式LINE@の運用を開始しました。イベントや研修案内、求人情報などをお知らせしています。

●今後行いたい取り組み
 定年退職後の再就業支援にさらに力を入れたいと考えています。定年退職後のセカンドキャリア研修・交流会などを開催し、経験豊富な価値ある人材が引き続き看護の現場で活躍していただけるよう、セカンドキャリア支援の広報を行い、計画的に実施していきたいです。

●離職者へのメッセージ
 再就業に向けて三重県ナースセンターが少しでもお役に立てればと思っています。経験豊富な看護職の相談員が届出者のお気持ちに寄り添い、丁寧に対応させていただきます。届出された方の気持ちが再就業へと動いたときが、看護の魅力を知っている相談員にとっても大きな喜びを感じる瞬間となります。適切なマッチングとなるよう時間をかけて求人施設をご紹介し、施設見学に同行させていただくこともあります。どうぞ安心して三重県ナースセンターをご活用ください。

●その他のアピールポイント
 三重県は南北に細長い地形です。三重県ナースセンターは県庁所在地の津市にありますが、三重県の北勢部を主に担当する四日市サテライトも開設しています。四日市サテライトは近鉄四日市駅に隣接し、土曜日・祝日も営業しております。平日の来所が困難な方は、どうぞ四日市サテライトをご利用ください。

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