「し(仕事のことは)ず(ずーっと)お(お近くで)か(看護職がお手伝い)」をモットーに活動する静岡県ナースセンター。JR静岡駅の目の前に居を構えるナースセンターで、静岡県看護協会常務理事の鈴木千春さん、静岡県ナースセンター所長の河井友子さん、再就業支援コーディネーターの岡村曉美さんと平野友子さんにお話を伺いました。

就業相談員に加えて、「再就業支援コーディネーター」を配置しているそうですね。

岡村 2015年10月よりスタートした離職時等の届出制度ですが、まだまだ看護職の間で十分に認知・活用されていない状況だと受け止めています。そこで静岡県ナースセンターでは2017年4月から私たち2人の再就業支援コーディネーターを配置して、離職した看護職が次の職場で働くまでの切れ目のない支援を提供することになりました。
 届出の確認ができたら、再就業支援コーディネーターがなるべく早い段階で求職者へ連絡を取り、お話ししながら状況や希望を聞き取っています。さらに、eナースセンターへの登録を案内したり、施設とのマッチングを担当する就業相談員との面談を設定したりと、スムーズに再就職に向かって進んでもらうための橋渡し役のような感覚で動いています。

「施設とナースセンターの距離が縮まってきているという実感があります」と話す就業支援コーディネーターの平野友子さん

平野 再就業支援コーディネーターは届出制度について施設側の理解を深める役割も担っています。県内に181カ所ある病院を順次訪問して、管理者の方が届出制度をどのようにとらえているか、どのような手順で届出が行われているかといった点を確認しています。
 私自身、2年前まで病院で働いていた看護職ですが、正直なところ当時はこの制度をきちんと理解できていませんでした。看護管理者、そして届出の実務を担う事務や秘書の方にも、届出制度の全体像や意義を分かりやすく伝えていく必要があります。この制度がしっかりと活用されれば、施設の人員充足にも結び付くというメリットを知ってもらうことも大切ですね。取り組みを始めてから施設とナースセンターの距離が縮まってきているという実感があります。

求職者からの相談に応じる際には、どんなことを大切にしていますか。

静岡県看護協会常務理事の鈴木千春さんは「なるべく本音に近いところを探り出してマッチングにつなげることを大切にしています」と話す

鈴木 就業相談員は静岡の本所に3人、沼津の東部支所と浜松の西部支所に2人ずつ、天竜相談所に2人、下田相談所に1人在籍しています。
 ナースセンターへ相談に見える方は、それぞれ大なり小なり悩みや不安を抱えています。
 「前の職場を退職した理由は何ですか」と尋ねると、最初は就職面接のときのような型通りの答えが返ってくるものですが、よくよく聞いてみると「本当の理由」が現れてくることも少なくありません。本人がどんなサポートを希望するかにもよりますが、相談を重ねる中で信頼関係を築いていき、なるべく本音に近いところを探り出してからマッチングにつなげることを大切にしています。
 また、紹介する求人施設のことを、就業相談員がいかに詳しく把握しているかという点も重要です。新たに登録のあった施設を中心に、訪問したり電話で話を聞いたりして施設の事情も理解した上で、日頃の相談業務に臨むようにしています。

河井 それに加えて、ナースセンター内に「職場や学校での悩みごとの相談窓口」を設置し、専用ダイヤルも開設しています。再就職のことに限らず、看護に関することであればどんな悩みでも受け付けており、2016年度には来所や電話を合わせて175件の相談がありました。特に多いのが、職場環境や人間関係についての不満や、看護職としての自分に自信が持てないといった悩みです。また、学生さんからは「自分は看護に向いているのか」「奨学金をもらっているが看護職として働くか迷っている」といった適性に関する相談も寄せられます。気持ちが整理できるまで本人の話をじっくり聞くことを重視しているため、1回の相談が1時間以上に及ぶことも少なくありません。

多様な研修事業も受講者から好評のようです。

鈴木 看護職の再就職を支援する3種類の研修を用意しています。
 第1に、講義と簡単な実技演習が受けられる3日間の「再就業準備講習会」。2017年度は県内各地で8回の開催を予定しており、どんな方でも気軽に参加していただけます。
 第2に、協力施設で3~5日間の実習が行える「病院・訪問看護ステーション派遣型再就業研修」。期間や内容は希望に応じて柔軟に調整可能で、再就職を目指すに当たり実践的な知識や技術を習得したいという方にぴったりです。気になる施設で試しに数日間だけ働いてみるという使い方もでき、「このペースで働いて子どもは大丈夫かな」「通勤時間はどうだろう」など、再就職後の生活状況をシミュレーションするよい機会となっています。
 そして第3に、2015年からスタートした「看護職員介護施設等再就業研修」です。介護施設における看護職の役割や具体的なケアの方法について、講義と演習、さらに施設見学を通して学ぶことができます。介護施設への再就職を希望する方はもちろん、病院勤務の看護職が興味を持って受講するケースも多いですね。看護職に求められる役割が変化しつつあることを、現場の皆さんも敏感に感じ取っているのではないでしょうか。

「再就業者フォローアップ研修会が好評です」と話す就業支援コーディネーターの岡村曉美さん

岡村 また、ナースセンター本所のほかに看護協会の東部地区支部(長泉町)と西部地区支部(浜松市)で実施している「看護技術(採血・静脈内注射)演習」は、求職者はもちろん、技術に不安がある新人看護職も多く受講しており、安定的な人気を誇る研修です。
 そして、当センターで特に力を入れているのが「再就業者フォローアップ研修会」です。1年以内にナースセンターの紹介で再就職した看護職を対象として、グループディスカッションを通して自身を振り返ってもらい、これからもいきいきと働き続けるための工夫や考え方について講師のレクチャーを受けます。
 「研修会」ではありますが、実際には和気あいあいとおしゃべりするお茶会のようなイメージです。お声がけした方の参加率は6割以上ととても高く、「モヤモヤしていた気持ちが晴れました」「明日からまた頑張れそうです」と、参加者が明るい顔で帰っていくのが印象的です。

静岡県の看護職の皆さんへメッセージをお願いします。

静岡県ナースセンター所長の河井友子さんは「5つの拠点が、密に連携を図りながら求職者を支援しています」と話す

河井 ナースセンター本所、東部支所、西部支所に、下田相談所、天竜相談所を合わせた5つの拠点が、密に連携を図りながら求職者を支援しています。さらに、県内13カ所のハローワークで年間102回に及ぶ就業相談を行い、そのうちの9カ所では地元の求人施設が参加する就職相談会も実施しています。まだナースセンターに求人登録していない施設の担当者が参加してくれることもあり、その土地の最新の求人情報が得られる絶好のチャンスです。当センターのメールマガジンに登録すれば、気軽に研修や相談会などの案内を受け取ることができます。静岡県看護協会のWEBサイトから、是非ご登録ください。

鈴木 ナースセンターを利用する大きなメリットの一つに、特定施設への就職に縛られないという点があります。施設研修に参加しても、そこへ就職しなければならないということはありません。本当に自分に合った職場かどうか見極めてから働きたいという方は、是非ナースセンターを活用していただきたいと思います。
 静岡県は気候も人間関係も温かく、海と山の両方を擁する自然豊かな土地柄です。暮らしやすさという点では群を抜いていると思います。求職者の皆さんにはぜひ、県内での就職を検討していただければと思います。

静岡県ナースセンター
〒422-8067 静岡市駿河区南町14-25(エスパティオ3階)
TEL:054-202-1761
http://www.shizuoka-na.jp/nursecenter/

●センターの主な事業内容
1.ナースバンク事業
・県内3カ所のナースセンター(静岡、浜松、沼津)と2カ所のサテライト(下田、天竜)での就業相談・支援 ※静岡は火~金曜日は19時まで実施
・ハローワークとの連携事業(就業相談会:年間102回)
・再就業支援コーディネーターを配置(届出制度からの求職登録支援の実施)
・求人施設訪問による情報収集活動
2.看護職員再就業支援事業
・再就業準備講習会(3日間の日程で年8回開催)
・病院・訪問看護ステーション派遣型再就業研修(受講者の希望により3~7日間の日程で研修計画)
・看護職員介護施設等再就業研修(介護施設等への就業希望者を対象とし、3日間の日程で年2回開催)
3.離職防止対策事業
・看護技術演習(毎月4回開催)
・再就業看護師へのフォローアップ研修(ナースセンターを介して就業した看護職対象)
・セカンドキャリアセミナー(おおむね55歳以上が対象)
・悩み相談窓口(専用ダイヤルで専任の就業相談員が対応)
・退職状況調査の実施(施設調査、退職者調査)
4.看護の心・普及啓発事業
・「看護の日・看護週間」イベント
・看護の出前授業
・ふれあい看護体験
・高校生1日ナース体験事業
・看護職こころざし育成セミナー(高校生対象、様々な分野の看護職が講師を務める職業の魅力発信セミナー)
・看護学校等進路説明・相談会(県内の看護系大学・看護専門学校が参加する相談説明会)
・県外看護系大学への学校訪問
・広報活動(ホームページ、メールマガジン、ポスター、パンフレット、情報誌等への掲載、医療施設・介護施設・看護学校訪問によるPR)
5.その他、関連団体との協議会(年2回開催)

●センターで今一番注力している事業
1.再就業支援コーディネーターの活用
・届出制度の登録推進:各施設に対して代行届出を依頼するとともに届出登録支援を行い、確実な登録をサポート(施設訪問)
・登録者に対する就業支援
・勤務環境改善に向け、ふじのくに医療勤務環境改善支援センターと連携した支援(指導・助言)
2.ハローワークと連携した就業相談および求人施設参加による就職相談会
・県内13カ所のハローワークに就業相談員が出向き、就業相談(年間102回)
・県内10カ所のハローワークで開催する就職相談会の開催(1~5施設が参加し、その場で求人施設と求職者が面談可能)

●今後行いたい取り組み
1.求人施設へのアプローチ
・それぞれの地域の特性を生かした「地域と共同開催型就職相談会」の開催
・「魅力的な求人施設への取り組み」に関する研修会の開催
2.介護施設を中心とした再就業研修の充実
・eラーニングの導入と介護施設での開催数増加

●離職者へのメッセージ
1.ナースセンターの存在を知り、活用してほしい
・「仕事探しはやっぱりナースセンターだね」と認識していただけるように活動していきます(施設・学校を中心に訪問し、広報活動を展開)
2.静岡県ナースセンターは「し・ず・お・か」の心意気を大切に看護職と関わります
・「し(仕事のことは)ず(ずーっと)お(お近くで)か(看護職がお手伝い)」をモットーに、看護職一人ひとりの想いを大切に関わっていきます。

●その他のアピールポイント
 静岡県看護協会は、看護の将来ビジョン「いのち・暮らし・尊厳を守り支える看護」の実現に向け、「看護の質向上」「働き続けられる職場環境づくり」のさらなる推進を図っています。多くの皆さまの声を大切に、事業・政策に係る情報を速やかに提供・共有し、看護職が誇りと責任、やりがいをもって役割遂行できるようサポートを行っています。そのために、事業に係るすべての方々とのコミュニケーションを大切に協働・連携した事業を展開していきます。その過程では、個々の看護職が自分の考えや意見を表明し、相手の思いをしっかりと受け止めていくことを大切にしています。ナースセンター事業においても、職員一人ひとりが自分の持てる能力を生かし、利用してくださる看護職を全力でサポートしています。

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