岐阜県ナースセンターでは、経験豊富な看護職の相談員たちが、再就業を希望する方とじっくり話し合い、再出発を後押ししています。岐阜県看護協会で常務理事を務める小谷美重子さんと、ナースセンター事業課長の山中多美子さんに、ナースセンターが提供するサポートとその活用方法についてお話をうかがいました。
登録をした方とじっくり話すことを重視しているとうかがいました。
山中 まずはナースセンターに登録をされた方に対して、登録後2・4・6カ月のタイミングで連絡し、求職の希望や悩みの有無を確認します。積極的に電話して直接お話しすることで、「思ったように次の職場が見つからない」「今後のキャリアが不安だけれど誰にも相談できない」といった悩み聴くことができることもあるからです。
またナースセンターの紹介で就職された方にも、就職して1・3・6カ月のタイミングで電話しています。就職後に生じた新たな悩みに、あらためて相談に応じるケースもあります。

小谷 肝心なのは、相談者からしっかりと話を聞き、条件等に十分納得したうえで再就職してもらうことだと考えています。不満や疑問を抱えたまま働き始めて、すぐに退職してしまうケースも少なからずあるからです。やみくもに転職を重ねると心身を消耗してしまいますし、採用する施設も人を採用・教育するために大きなコストやエネルギーを使っていますから、お互いに損ですよね。
ナースセンターの相談員たちは、看護の現場で活躍していたベテランのナースで、じっくりと話を聞くことに長けています。まずは自身の思いを本音で話してもらった上で、よりよい選択ができるようカウンセリングを行うようなイメージですね。話をしているうちに相談者の働き方に関する考え方が変わったりすることに気づくこともあります。
相談と合わせて就業を支援する研修制度には、どのようなものがありますか。
小谷 まず、医療施設で実地研修を行う「看護職員等就業促進研修(医療機関実施研修)」です。求職者の希望する医療施設で実地研修を受けられるようナースセンターが調整し、日時やプログラムも本人や施設と相談の上で決定します。基本的には1~3日間のコースで、最新の医療・看護の動向はもちろん、感染防止対策や輸液ポンプの操作、静脈注射などの看護技術に関する講義を施設の担当者から受けた後、看護師長や担当看護師の下で臨床業務を実際に学ぶことが可能です。数年以上にわたる長いブランクがある方にとって、再就職する上で感じる不安を大幅に軽減できる内容となっています。研修を受けた施設への就職を強いることはありません。「近所に気になる病院があるから、ちょっと見学してみたい」といった感覚でもかまわないので、気軽に受講してほしいと思っています。受講者の7割以上が就業に結びついています。

山中 もう一つの柱となるのが、福祉施設や訪問看護ステーションに興味がある方向けの「再就業支援研修」です。看護協会の研修室における3日間の講義の後、ご自宅近くの施設で2日間の実習を受けるプログラムとしています。育児中の方に対しては、子ども1人当たり1日2000円までの託児にかかる保育料を助成していますから、ぜひ活用してほしいですね。
この研修における講義の特徴は、「訪問看護の現状と在宅での看護倫理」「福祉で働く看護職の役割」というテーマを含んでいること。多くの看護職にとって福祉施設や在宅看護はまだまだ未知の領域で、世代によっては「そもそも現場を見たこともない」という方も少なくありません。また医師がいない環境で看護師が重要な判断を求められる場面もあるため、学習が欠かせません。
さらに「職場でのルールや各制度を学ぶ」というテーマで、社会保険労務士のレクチャーを受けることができるのもポイントです。病院で働いている看護職は労働者の権利や義務といった話に疎いことが多く、労働契約や福利厚生、年金制度などについて学ぶ機会が必要と感じて取り入れました。
的確なマッチングのためには、求人施設の情報をきめ細やかに把握することも欠かせませんね。
山中 求人票に載っている情報は、その施設に関するほんの一部でしかありません。求職者が本当に知りたい「かゆいところに手が届く情報」を得るために、日頃から医療施設や福祉施設と電話で話をするだけでなく、新規に求人票が登録された際にはできる限り出向いて、看護管理者の方から詳しく話をうかがうようにしています。
これには多治見支所、大垣の西濃サテライト、高山の飛騨サテライトのスタッフにも力を貸してもらっています。支所やサテライトでは、その地域の事情を熟知した看護職が採用されており、地元の看護職に的確なアドバイスができるだけでなく、求人側にナースセンターの存在や活動内容を知ってもらい連携を深めるという広報的な役割も担っています。今後は、支所やサテライトでミニ集会のようなイベントを開き、地域の看護職の交流の場としていきたいと考えています。
小谷 一口に岐阜県といっても、地域によって看護職の就職事情はかなり異なっています。例えば、多治見地区は名古屋までJR中央本線で約20分と近く、「新人の頃は名古屋で働いていたけれど、出産後は自宅近くの多治見で再就職しようかな?」とUターン就職を考える人も多くいらっしゃるので、そうした方が県内でスムーズに就職できるようフォローすることを重視しています。支所やサテライトに加えて、県内8カ所のハローワーク(岐阜、大垣、関、恵那、高山、美濃加茂、多治見、中津川)でも出張相談会を開催しているので、最寄りの施設をうまく活用してください。
県内の看護職の方へメッセージをお願いします。
山中 私たちは、ナースセンターの存在を早い段階から知ってもらえるよう、看護学校などを定期的に訪問しています。いつか退職や転職を考えたときに、「そういえばナースセンターがあったな」と存在を思い出してもらえたらうれしいですね。こうした活動の成果で、看護学生が就職相談に訪れたり、学生さんが自宅に持ち帰った資料を見た保護者からの相談も増えています。
小谷 当センターでは気軽に資料チェックなどができるオープンスペースに加えて、じっくりとプライベートな相談ができる完全個室も備えています。就業相談に限らず、看護の仕事に関わる悩みならどんなことでもかまわないので、どうぞ気軽に相談してください。岐阜県の看護職が一歩前へ踏み出す勇気を持つために、私たちが背中を押します。

岐阜県ナースセンター
〒500-8384 岐阜市薮田南5-14-53
岐阜県県民ふれあい会館第1棟5階
TEL:058-277-1010
http://www.gifu-nc.jp/index.html
●センターの主な事業内容
・無料職業紹介事業
・看護の心普及事業(ふれあい看護体験、出前授業など)
・広報事業
・ナースセンター支所とサテライトの運営
・研修事業(看護職員等就業促進研修、再就職支援研修、訪問看護師養成講習会など)
●センターで今一番力を注いでいる事業
・広域な岐阜県内の求人・求職をきめ細かく行うための、サテライトおよび支所の拡大と支援
●今後行いたい取り組み
・セカンドキャリアの求職者の登録推進・就業拡大・研修実施
・子育て世代への登録・マッチング推進
・サテライトでのミニ集会の開催
●離職者へのメッセージ
働きたいと思ったら、ナースセンターやハローワークの出張相談会などへ気軽にお越しください。まずはあなたのお話をじっくりと伺い、就職に当たって不安に思われることをお聴きしながら、適切な就職先を考えます。看護協会に入会していない方も、就業中の方も、看護学生さんも、広くご相談を受け付けています。
●その他のアピールポイント
当センターの相談員は聞き上手で、明るく笑顔の絶えない素敵なメンバーです。1人でも多くの皆さんに、自分に合った職場で力を発揮してほしいと願いつつ業務を行っています。



