青森県ナースセンターは、求職者・求人側の双方と厚い信頼関係を築く中で、質の高い相談業務を実践しています。その取り組みの様子と根底にある思いを、青森県看護協会常務理事の大鰐恭子さんと、ナースセンター長の福多彩子さんにうかがいました。
特に相談業務に力を入れているそうですね。

大鰐 求職者から相談希望の連絡をいただいてから3日以内に、ファーストコンタクトを取るよう心がけています。まずは第一報を早めに入れることが信頼関係の構築に役立ちますし、その方にとってベストのタイミングで支援することにもつながります。例えば、「すぐに就職したい」という方には早期から具体的な施設情報を提供し、「いずれは就職したい」という感覚であれば状況を見ながら研修や移動相談のお知らせなどをしていきます。
青森県では、県が策定した「青森県看護師等サポートプログラム」というものがあり、2020年度末までにナースセンターの斡旋による就職数を300人にするという目標が掲げられています。そこへ向かっていくために私たちが何をすべきか、スタッフ間で話し合った結果、まずは3日以内の連絡を徹底することを決めたのです。2017年度からはナースセンター長が兼任から専任になったほか、事務員も1人増員されて体制が整ってきたこともあり、相談業務によりいっそうの力を注いでいます。
福多 実際、3日以内の連絡を目標にしたことで、相談員も事務員も今やるべきことがはっきりして、動きが取りやすくなったように感じています。2016年度には4788件に上る相談がありましたが、相談員は皆、その一つひとつと丁寧に向き合ってきました。一般的な就業相談はもちろん、職場の上司には言えない悩みを抱えている方が、私たちだけに悩みを打ち明けてくれるケースも少なくありません。
もう一点、相談業務の一環として重視しているのが、残念ながら不採用となってしまった方へのサポートです。そもそも募集人数以上の方が応募しているケースでは、「不採用になる可能性もあるけれど、もしそうだったらすぐに連絡くださいね」と事前にお伝えするようにしています。不採用となってしまったら、実際は連絡を待つのではなく、時を置かずにナースセンターから連絡を入れるようにしています。「これからも相談に乗りますよ」という応援の気持ちを伝えることで、多くの場合、また気持ちを奮い立たせて前向きに再就職を考えてくれるようになるからです。
求職者に学びの機会を提供することもナースセンターの重要な役割ですが、どのような研修メニューを用意していますか。
大鰐 まず、毎年実施している「個別支援研修」があります。自分の中で不足している知識や技術を再就職前に学んでおきたいという方のために、協力施設で1~2日の研修を実施するものです。受講者負担で看護賠償保険にも加入し、その施設の看護職と同様に体験でき、実践的な学びを得ることができます。この研修は随時募集しており、受講者が日程を調整することができます。
また、2016年度まで毎年開催していた「看護力再開発講習会」があります。この研修は、医療施設での実践を含む5日間のプログラムで、そのうち1日は介護福祉施設での実習となっており、病院と施設の両方を体験してもらうことができます。
2017年度からは、よりニーズの高い内容に特化した「静脈注射の学びなおし研修会(初級編)」というかたちで開催し、従来の「看護力再開発講習会」と隔年で開催することにしました。2017年の「静脈注射学び直し研修会(初級編)」は青森県立保健大学を会場として、9月9日の土曜日に開催します。午前中は講義、午後からはデモンストレーションでミキシング、プライミング、留置針穿刺などの手技を学び、最後にシミュレーターを用いて演習します。静脈注射の基礎について徹底的に学ぶことができます。
福多 そのほか、50歳代以上の方に人気なのが「セカンドキャリアセミナー」です。社会保険労務士から年金や退職後の生活設計について講義を受けた後、セカンドキャリアとして再就職した方の体験談を聞き、参加者同士で交流する機会を設けました。特に介護福祉施設や保育園などでは、ベテランを含む幅広い年齢層の看護職を募集しています。また、修学旅行の付き添いやマラソンの救護など、イベント時に単発で働くことも可能です。働き方が多様化している今、セカンドキャリアにもいろいろな選択肢があることを知る機会になればと思います。
求職者と施設をベストのかたちでマッチングするために、心がけていることはありますか。

福多 施設から提出される求人票には書き切れない情報というものもたくさんあります。しかし、そのような「細かいこと」こそ、求職者にとっては重要なポイントであったりするものです。例えば、山間の病院であれば車でどのくらい通勤時間がかかるのか、そもそも自家用車がない場合は通勤可能なのかといったことなどです。ですから、求職者の質問を受けて確認するのはもちろん、求人票が届いた時点で施設側と連絡を取り合い、詳細を把握しておくよう心がけています。また、求人票は6カ月で自動的に期限切れとなってしまうため、各施設に連絡して情報更新を促すなど、情報のメンテナンスにも積極的に取り組んでいます。
大鰐 ナースセンターから施設訪問を随時行っていますが、施設の採用担当者がナースセンターを訪れたりすることも少なくありません。そして、そのような信頼関係があるからこそ可能になるマッチングもあります。例えば、メンタルの不調が原因で退職された方は、次の職場を探す際に特段の配慮が求められます。ある施設の看護師長さんに相談して、「うちなら受け入れられます」ということで再就職を果たしたケースもありました。人間関係や労働環境などをきちんと配慮してくれる職場を紹介するためにも、個別に事情を話せるくらい信頼し合える関係を築いておくことが重要なのです。
青森県で再就業を目指す看護職の皆さんにメッセージをお願いします。
福多 青森市まで足を伸ばすのは難しいという方のために、県内5地区(ハローワーク八戸・むつ・五所川原・三沢、弘前就労支援センター)で月に1回、「看護のお仕事移動相談」を実施しています。その地域の事情に精通した看護職が就業相談員を務め、親身になって相談に乗っています。各地の医療施設と顔の見える関係が築けているケースも多く、求職者の相談に応じながら施設側へ「透析看護を希望する方が見えていますが、そちらでいかがですか?」などと直接交渉することもあります。
大鰐 2017年4月にリニューアルした当センターのウェブサイトも、ぜひ見てほしいです。ナースセンターの研修や相談会の情報はもちろんのこと、看護職のインタビュー記事なども掲載しています。
ナースセンターを利用する最大のメリットは、個室でじっくりと悩みを打ち明けたり、長期にわたってサポートを受けたりできることです。さらに、無事に再就職を果たした後も、私たちが順次施設を訪問して、ご本人や指導者とお話しする機会を持つようにしています。指導の仕方、され方などを確認しながら、無理なく仕事を続けていけるようフォローしています。どんな相談にも誠意を持って対応し、サポートを継続していきますから、自分にぴったりの働き方を見つけられるまで私たちを頼ってくださいね。

青森県ナースセンター
〒030-0822 青森県青森市中央3-20-30 県民福祉プラザ3階
TEL 017-723-4580
http://aomori-nurse.jp/
●センターの主な事業内容
①求職者への支援
・とどけるんやナースセンターへの登録、ハローワークとの連携事業、移動相談所などから得た情報をもとに、届出者へ3日以内に連絡することを目標にしている。早急に就労支援が必要な人への対応は素早く、時期を見て就労希望の人には時々連絡を入れるなど、漏れのないようにしている。
・移動相談所を県内5地区で月1回開催し、ナースセンターへ来所できない求職者の便宜を図っている。
・セカンドキャリアセミナーの開催や、ブランクのある求職者の多くが不安を感じている静脈注射に関しては大学と連携した研修会を隔年で開催している。また、臨地実習として1~2日の個別支援研修は毎年、5日間の看護力再開発講習会は隔年で行い、求職者のスキルアップを図っている。
②求人側との連携
・面談や電話連絡などで求人情報を確認し、求職者との認識のズレが生じないよう追加・修正している。
・求人側の担当者と面談できたときは、信頼関係を構築するため誠意を持って対応している。
・求人票の有効期限切れの際は、事前にお知らせを郵送している。
●センターで今一番注力している事業
①求職者へのさらなる手厚い支援
2017年4月からナースセンター長が専任となり(3月までは兼任であった)、さらに事務員も1人増員となった。徐々に業務整理を行い、相談員がより相談業務に専念できるような環境が整いつつある。求職者に寄り添い、スピーディーでタイムリーな支援を行うことをモットーとしている。
②不採用者への対応
●今後行いたい取り組み
①求職者のスキルアップ
ブランクのある求職者の不安を解消するため、ニーズに沿った研修を企画する。現在、医療機器と看護記録に関する不安が再就労のネックになっているケースが多いことが分かっている。また、セカンドキャリアセミナーなどを利用して求職者や離職者同士が交流する場を設け、情報交換や問題の明確化を図りたい。
②求人情報の拡充
ナースセンター登録を呼びかけていく。ハローワークに登録してもナースセンターに登録していない施設が多いため、施設訪問や電話連絡など行い、求人登録の拡大や情報の充足を図りたい。
●離職者へのメッセージ
「詳細な求人情報を得たい」「条件に合った施設を探したい」「ブランクがあって不安」など、求職中の方の様々な相談に応じます。相談員が誠意を持って対応しますので、お気軽にご連絡ください。まずは来所して、気軽にお話から始めてみませんか。また、セカンドライフを送る方も、築いたキャリアを活かしながら無理のない範囲で働き続けることが可能です。ぜひ、ご相談ください。
●その他のアピールポイント
求職者であれ求人側であれ、人と人とのつながりを大切にしています。それが「求職者に寄り添った、質の高い相談業務」につながってくると思います。そのためにも、まずはナースセンターの職員たちが笑顔になり、明るい職場であることを心がけています。




(http://aomori-nurse.jp/)