宮城県ナースセンターでは昨年秋から病院訪問を開始し、すでに県内の半分の病院を回りました。看護管理者と顔の見える関係を築き情報交換を行い、また管理者の抱える問題に耳を傾け支援を行うことで、離職防止や復職支援につなげていこうというのがその趣旨です。南三陸病院への訪問に同行するとともに、ナースセンター担当部長の菅井京子さんと相談員の石川美知子さんに話をうかがいました。

 宮城県の北東、三陸海岸に面した高台に2015年12月、南三陸病院が開院しました。東日本大震災で公立志津川病院が水没してから約5年、仮設診療所、臨時の病院を経て、保健と医療の一体化を目指す地域の中核施設としての再開です。

 宮城県ナースセンター相談員の佐藤久美子さんと菅井さんが南三陸病院を訪問したのは3月下旬。
 看護部長の高橋るり子さんにナースセンターの活動内容と届出制度の説明を行った後、看護職の採用状況について質問しました。
 志津川病院で働いていた人たちが戻ってきてくれたものの、「募集をしてもなかなか集まらない」と高橋部長は話します。佐藤さんは奨学金制度の有無について、教育体制について、勤務体制について、集客についての工夫など、具体的な状況を尋ねていきます。

南三陸病院の高橋るり子 看護部長

 それぞれを説明した後で高橋部長は、「いろんな経験をスタッフに積ませたいが、この病院だけでは限界があります」と話しました。
 そして「南三陸病院には被災地における看護の経験や在宅医療のノウハウがあります。他の病院との間でそれぞれの病院の個性を生かした交換勤務ができれば、ここで働く魅力がより高まるのではないでしょうか。制度作りを看護協会にお願いしたい」と提案しました。


県内の病院訪問を行っているそうですね。

「病院訪問を通して現場の抱える課題を少しでも解決できれば」と話すナースセンター担当部長の菅井京子さん

菅井 昨年10月から始めて、県内139ある病院のうち68施設まで訪問が終わりました。看護部長さんと顔を合わせて、困っていることをうかがったり、こちららで努力できることなどをお伝えしたりします。病院の様子を少しでも知ることができれば、より求職者に紹介しやすくなりますよね。「こんな看護部長さんでしたよ」とか、「詳しい条件はこうですよ」とか。
 南三陸病院の訪問でも、人手が足りないとはおっしゃっていましたが、訪問看護や総合ケアセンターとの連携などを見せていただいて、地域の復興に向けて地域包括ケアに取り組む姿勢が理想的だなと思いました。それから独自の奨学金制度についても詳しくうかがうことができて参考になりました。
 次からは抽象的ですけれども「感じがよかったよ」という話も求職者にできますし、南三陸病院に興味があるけれど「私でも大丈夫なのかしら」という方がいたら、「こういう方がいるのですけど」と看護部長さんに直接相談できると思います。

 病院訪問を始めるに当たっては、県北、仙台、県南と地域を分けて、その地域の病院を退職した看護管理者の方にお願いして支援委員となってもらいました。やっぱりその地域の実状を知っているし、管理職の悩みも分かりますしね。看護協会長やナースセンターの職員とともに病院を訪問しています。
 病院訪問では、まずナースセンターの役割や届出制度などの説明を行います。私も病院の看護部長だった時は届出よりも先行してやらなければならないと思うことが多かったのですが、直接、顔を見ながら「よろしくお願いします」と言われれば違いますよね。そして大切な目的は、看護管理者を支援して看護職の離職防止につなげるということです。どの看護部長さんも、相談したくてもなかなかできないような、悩みをいっぱい抱えているのではないでしょうか。看護部長は孤独なのです。
 南三陸病院からもたくさんの課題をいただきました。その全てをすぐに解決できるわけではないのですけれど、一緒に考え、課題を少しでも解決できればという思いです。

看護職の復職研修についても教えて下さい。

菅井 「潜在看護職員復職研修」を、同じ内容で年に2回行っています。今年度は9月20日(水)から26日(火)までと、1月18日(木)から24日(水)まで、土日を挟んで5日間の研修です。約半月前が申し込みの締切となります。
 看護の動向や医療安全、感染予防対策などに関する講義を看護協会内にある看護研修センターで行うのに加えて、採血・注射や救急処置の技術研修を東北大学病院の向かいにある東北大学クリニカル・スキルラボで実施します。それから訪問看護センターや介護施設の所長さんなどにも来ていただいて、それぞれの仕事の特徴を話してもらったり参加者の相談に乗ってもらったりもします。
 研修が終了した方は、病院で3日間の見学実習を行います。実習病院は参加者のお住まいを考えて県内に3カ所設定し、そのうちの1病院を選んでいただきます。実習病院では3日間にわたってしっかりと指導者を付けて下さるので、終了後の参加者アンケートでも「よく指導してもらった」という声が多くありました。

 昨年度は、1回目は12名、2回目は14名の参加で、すぐに復職した方は6割でした。参加者の背景としては、もう少しスキルアップしたいという方もいましたし、子育て中の方、そして離職期間が20年という方など様々で、石巻や大崎から参加した方もいらっしゃいました。比較的長い日数の研修ということもあり復職に前向きな方が参加していると思いますが、その一方で、研修を受ければ受けるほど不安になるという一面もあるようです。そこは講師が「私もそうだったのよ」「大丈夫」と背中を押してくれました。

 復職研修に関する告知は、仙台市営バスに広告を出すとともに、人の集まるスーパー等にお願いして、店内に「あなたの持っている免許、生かしませんか?」というポスターを貼らせていただきました。広告を見て研修に参加した方も実際にいらっしゃいました。今年も広告を見かけて「そろそろ働こうかな」と思ったら、是非連絡して下さい。背中を押すお手伝いをします。参加は無料、今年はお子さんを預けられる場所の確保を検討中です。

訪問看護研修も行っていますね。

菅井 訪問看護師養成講習会は、10月から2月の間に行います。まずeラーニングを受講してから訪問看護ステーションで5日間程度の実習、そのうち看護研修センターで1日の演習という構成です。昨年度は17名が研修を終了しました。病院に勤めているけれど訪問看護に進みたい、あるいは退院支援のために学びたいという人の他に、ブランクがあるけれど復職先として選びたいという方もいました。こちらはeラーニングがあるので、受講料が1万4000円かかります。

ハローワークとの連携についてはいかがですか。

相談員の石川美知子さんは「病院訪問で看護管理者が熱く語っているところは間違いありません」という

石川 ハローワーク仙台には偶数月の第3火曜日、石巻には偶数月の第3木曜日、塩竃、古川、大河原には奇数月のそれぞれ第1火曜日、第2金曜日、第4火曜日に訪問しています。仙台のみ予約制ですが(ナースセンターに連絡して下さい)、他のハローワークは事前申し込みが不要ですのでお気軽に足を運んでいただけたらと思います。それから、気仙沼にも年に1回行っています。
 また、ハローワークに限らず、就職の相談に来る人にいつも言っているのは、通勤しやすいということを第一に考えること、そして看護管理者がしっかりしているところを選びましょうということです。病院訪問で看護管理者が熱く語っているところは間違いありません。
 ナースセンターに子連れで相談に来る方のために、子どもさんが床に座っておもちゃで遊んでいる間に話をできる部屋も作りました。是非相談しに来て下さい。



宮城県ナースセンター

〒981-0933 宮城県仙台市青葉区柏木2-3-23
       訪問看護総合センター内
TEL 022-272-8573
http://www.miyagi-kango.or.jp/nursecenter/

●センターの主な業務内容
1. 無料職業紹介
2. 求人・求職相談
3. ハローワークとの連携(移動相談)
4. 広報活動(情報誌の発行)
5. 復職研修の実施
6. ワーク・ライフ・バランスの推進(ワークショップ、勤務環境改善研修会の実施)
7. 看護の心普及事業(看護のひろば開催、ふれあい看護体験、看護の出前事業、進路説明会)
8. 訪問看護師養成講習会実施

●センターで今一番注力している事業
1. 求人・求職に関する事業
2. ナースセンターの周知と機能強化
3. 届出制度周知と届出者への支援

●今後行いたい取り組み
 昨年度から病院訪問を行っています。実際に病院にうかがい看護管理者と話すことで、施設の内容、様子がわかり求職者とのマッチングがし易くなりました。現在68施設の訪問を行いましたが、地域によっては行けていない所もあります。病院は県内に139あるので、今後も病院訪問を続けることにより、顔の見える関係を築き情報交換を行い、管理者の抱える問題に耳を傾け相談支援を行い、離職防止や復職支援につなげていきたいと考えています。

●離職者へのメッセージ
 ナースセンターにぜひ一度お越し下さい。働き方や悩み事、何でも相談して下さい。一緒にお仕事を探しましょう。ナースセンターの広報誌、求人求職に関しての情報など定期的に送らせていただきます。また、復職研修やその他研修等の案内もさせていただきますので、条件にあった職探しができると思います。

●ナースセンターから一言
 eナースセンターを利用し、求人も求職もネットの中で行われるようになってきましたが、当センターでは顔の見える関係を保ちたいと考えております。子どもさんを連れて求職活動に来て下さい。

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