広島県ナースセンターでは、子育て中の離職時から復職を考えた時、さらには復職後まで、連続的な支援を行っています。ナースセンター事業部長の横道万里子さん、事業部次長の篠原トシ子さん、相談員の小池知子さん、山岡由加里さんにお話をうかがいました。

離職中の看護職を対象とした復職支援事業について教えて下さい。

「ママカフェは託児サービスもあるので、お子さん同伴でご参加ください」と話す相談員の山岡由加里さん

山岡 「いきいき子育てママのナースカフェ」という事業を実施しています。「結婚」「出産」は離職の大きな理由ですが、子育て中の看護職が孤立しないように、そしてやがて復職する時に備えてナースセンターとつながっていて欲しいという思いで開催しています。
 2016年度は福山市、広島市(安佐南区と中区)、東広島市、三次市、尾道市、府中町、廿日市市、呉市の8市町9カ所でそれぞれ2回ずつ開催しました。2時間半のプログラムでは、ナースを続けながら子育てをしてきた先輩の話を聞いたり、育児に関する情報交換をしたりします。また子育てのストレスを解消してもらおうと、お茶、スクラップブッキング、フラワーアレンジメント教室などの時間も組み入れています。参加費は無料で、託児サービスもあります。
 さらに、各市町の担当者に子育て支援制度について説明してもらっています。各地域の保育所入所情報が入手できるので好評です。行政の側も、看護職のニーズを知り施策に活かそうとしています。

「センター職員が積極的に地域に出て得た、データ上は見えない情報を就業支援に活かしています」と話すナースセンター事業部長の横道万里子さん

横道 復職希望者の技術研修も行っています。受講者のレベルの違いを考慮し三段階に分け、第一段階の「シミュレーター研修」は採血や注射、吸引などの基本技術をシミュレーターを用いて体験します。第二段階の「事前研修」は、広島大学病院、呉医療センター、福山市民病院の3カ所で、看護の現状に関する講義、および採血、注射、吸引、さらにPPE(個人用防護具)やME機器の取り扱いなどの技術演習を実施します。現在、もう1施設増やすことを検討中です。
 第三段階の「実践研修」は、県内98の病院と54の訪問看護ステーションで、実際の看護の現場で技術研修を受けることができます。看護師、助産師、訪問看護師それぞれのコースがあり、看護師の場合は、5、10、15日間の3コースから選べます。3コースとも基本的な内容は同じで、長期間のコースはじっくり時間をかけて学びたい人向けです。多くの人は5日間を選んでいます。助産師は20~30日間、訪問看護師は実習受け入れ施設の負担を考慮し3日程度を基準に調整します。
 シミュレーター研修受講者の3分の1は事前研修へとステップアップし、また事前研修を受けた人はほぼ全員が実践研修を受講されています。2016年度は実践研修を受講した43名のうち、約9割が復職しました。

相談員の小池知子さんは「ナースセンターは、就業先と連携して時間をかけた丁寧な復職支援を行っています」と話す

小池 復職後のフォローも始めました。「再就業定着訪問」といって、再就業後1カ月を目安に私たち相談員が就業先を訪問し、本人や看護管理者と面談します。この時期はまだ不安を抱えている復職者も多いので、何かあればいつでもセンターに連絡するよう伝え、管理者にも「復職者が相談しやすい環境作り」を依頼します。
 私たち相談員にとって、管理者と直に顔を合わせて話す機会は貴重です。相談員自身の勤務経験は限られるため、様々な求人施設の実情を細かいところまでは把握できていない場合があります。訪問により施設のニーズを具体的に把握できるため、マッチングの精度も上がります。

施設のニーズを正確に捉えることが大切なのですね。

横道 看護職の働く場というと病院や診療所をまず考えますが、介護施設も在宅も以前より医療依存度が高まってきており、看護職が必要な場面が増えています。看護協会も医師会や介護施設関係者などを含めた委員会を立ち上げ、働き方のパターンを模索していこうとしています。
 まず、定年退職した看護職の、訪問看護ステーションや介護施設などへの再就職を促進する予定です。2017年度から導入研修を開始します。広島県ではこれまで、定年退職者が訪問看護を始めた事例はほとんどありませんでした。短時間でも力になって欲しいという思いです。

ナースセンター事業部次長の篠原トシ子さんは「産業カウンセラーとのカウンセリングの内容が外部に漏れることは一切ありません。安心してご活用ください」と話す

篠原 一方、訪問看護は新卒の看護職にはハードルが高いとされてきましたが、これに対しては新卒訪問看護師の育成マニュアルを作成中です。
 現役の看護職にも「急性期看護は自分には合わない」と感じている人はいるでしょう。そういう人に訪問看護への転職を提案する場合もあります。就業相談でも「将来的には訪問看護をしたいが、今は臨床の現場で技術や知識を学んでおきたい」と話す人が増えつつあります。

現役の看護職に対してはどのような支援を行っていますか。

篠原 新人と中堅では悩みの内容が異なります。新人の多くが「なかなか仕事に慣れない」「職場に居場所を見出せない」といった悩みを抱く一方で、中堅は管理職昇格後の自身のキャリアをどうプランニングすべきか、といった悩みを抱えています。
 ナースセンターでは産業カウンセラー協会に委託して、2014年度より月2回カウンセラーを派遣してもらっています。派遣されているカウンセラーの先生は職場の人間関係からキャリアコンサルティングまで幅広く対応できるので、通常の就業相談内でもカウンセリングが必要だと感じた場合は紹介しています。「カウンセラーに話すことで自分の考えがまとまった。仕事を探す際にも役立つ」と好評です。みなさん目に見えて表情が変わるので、効果の大きさを感じています。

横道 「ナースセンター情報管理システム」を使って、2015年の届出制度施行後に届け出た登録者を地区ごとや研修受講者ごとにグルーピングし、センター事業や研修会などの情報提供を行っていきます。

復職希望者へのメッセージをお願いします。

山岡 ナースセンターは看護協会の会員でなくても、看護職なら誰でも利用できるので、ぜひ気軽にご連絡ください。私たちは1人でも多くの方の就業をお手伝いしたいと思っています。

小池 就業支援に関わるようになって、多様な求人施設が存在することを知りました。どんな方にも必ずそれぞれにマッチする施設があると思うので、一緒に探しましょう。

篠原 まずは一歩踏み出してください。「ナースセンターに電話をかける」「相談をしてみる」「カウンセリングを受けてみる」といったことが、その一歩だと思います。一歩踏み出すと自信が生まれ、必ず次につながっていきます。

横道 就業支援に関わり多くの場所で看護力が必要とされている現状を知りました。4万人といわれる県内の看護職が生き生きと働けるよう、今後もサポートしていきたいと思います。ぜひナースセンターをご活用ください。

広島県ナースセンター

〒730-0803 広島市中区広瀬北町9-2
TEL 082-293-9786
http://www.nurse-hiroshima.or.jp/?nursecenter=index

●センターの主な事業内容
1. 再就業促進事業
 求職・求人相談:ナースセンター内相談/ハローワーク出張相談/ハローワークと連携事業/市町出張相談/再就業定着訪問
2. 復職支援事業
 子育てナースママのカフェ/技術研修(シュミレーター研修/事前研修/実践研修)/復職支援訪問
3. ワークライフバランス推進事業
 職場環境づくり研修会/アドバイザー派遣事業/職場環境訪問事業/産業カウンセラー相談事業
4. 看護職員確保対策調査事業
 職場環境づくり実態調査/看護職員離職者実態調査/就業動向調査
5. ナースセンター情報管理システム事業
6. 看護の日・看護週間事業
 看護の日広島県大会(ナイチンゲール表彰、講演) /フラワーフエステイバル1日まちの保健室/出前授業
7. 小児救急医療電話相談事業
8. 広報事業

●センターで一番注力している事業
1. 再就業促進事業 … ハローワークや市町での離職看護職員に対する就業相談の実施
2. 復職支援事業 … 医療技術等の進歩で復職に不安を持つ潜在看護職員に対する実践的な研修機会の提供による再就業の支援
3. ワークライフバランス推進事業 … 看護職員が出産や育児・介護など個々のライフステージに応じた健康で働き続けることが可能となるような職場づくりを支援するため、職場改善や職場の悩みなどに対する相談、専門家による職場づくりのアドバイスの実施
4. ナースセンター情報管理システム事業 … 「とどけるん」の登録者に対する復職支援事業や研修会等の参加案内の情報提供

●今後行いたい取り組み
 団塊の世代が後期高齢者となる2025年までに地域包括ケアシステムを構築する上で、在宅サービスや施設サービスの分野を担う看護職員が大幅に不足していることから、熟練したスキルや認定看護師の資格を持つスペシャリストで定年退職した看護職員又は近く定年退職する看護職員であるいわゆる「セカンドキャリアナース」の、訪問看護ステーションや介護施設等への再就業を支援し、看護職員の確保・定着を図る。

●離職者へのメッセージ
「あなたに適した職場と働き方をベテランの相談員がコーディネートします」
  ~今もこれからも看護の仕事!~
・ナースセンターは、全国のネットワーク(NCCS)を活用して、求人・求職情報の提供、求職者・求人施設の登録、就業のあっ旋を実施しています。広島県に引越してきた方、離職して看護にブランクがある方等、誰でも”働きたい”と思ったとき、ナースセンターで、あなたに適した職場と働き方をみつけましょう。
・看護現場から離れて長い年月が経ち、医療技術等が進歩して復職することに不安を持っている看護職員の方には、病院や訪問看護ステーションで実践的な技術研修を実施して不安を解消するなど復職をサポートしています。
・いずれ復職を考えてはいるが、今は子育てのために看護現場を離職している看護職員の方を対象に、お茶、スクラップブッキング、フラワーアレンジメント等を楽しむママカフェを開催しています。託児所も設けていますので、気軽にお子さんを連れて参加してみてください。あなたにとって適切な時期に看護現場への就業をお手伝いします。

●その他のアピールポイント
 広島県ナースセンターは、”今もこれからも看護の仕事”をキャッチフレーズに出産や子育て、引越し、職場の人間関係など様々な事情により、看護を続けたいのに離職された方に、看護の現場をよく理解している経験が豊富な相談員が温かく就業相談を実施しています。
 広島県ナースセンターは、いざという時の看護職の方の“よりどころ”として支援しています。

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