大阪府ナースセンターでは、2016年度より再就業支援講習会の実施回数を大幅に増やしました。その詳細や就業支援に関する様々な取り組みついて、大阪府看護協会会長の高橋弘枝さん、労働環境支援事業部長兼ナースセンター事業所長の児玉洋子さん、同労働環境支援事業部ナースセンター事業所主任の喜多早苗さんにお話をうかがいました。
再就業支援講習会の回数を大幅に増やしたそうですね。

児玉 2015年度まで大阪府看護協会の11支部ごとに代表の病院で1回ずつ実施していたのを、2016年は5倍に増やしました。参加者の就職率が平均70%と高率であったため、さらなる就職率向上を狙ったものです。大小規模を問わず協力施設を募集したところ予想以上の反応があり、13施設が手を挙げてくださいました。
A、B、2つのコースがあり、Aコースは従来どおり11支部の代表病院、Bコースは協力病院で行います。いずれも事前に認知症、感染管理、医療安全などに関するeラーニングを視聴し、基礎知識を把握したうえで実習プログラムを受講します。Aコースは採血や一次救命処置など共通のプログラムですが、Bコースでは内容を各病院にお任せしています。Bコースの協力病院には総合病院だけでなくリハビリテーション病院などもあり、それぞれの施設の特色を活かしたプログラムが組まれています。託児ありのところもあります。
また、各コースを受講した後には、体験実習に行くこともできます。体験実習ができる48施設の中には、小児専門病院や障害者対象の病院、リハビリテーション病院や老健施設、訪問看護ステーションなど様々な施設があり、関心のある領域を体験することができます。
喜多 Aコースでは座談会を設けており、参加者同士の情報交換の場としています。横で聞いていると、就職希望者の実感を知ることができるため非常に勉強になります。そこで得た情報を支援に活かしています。
児玉 2016年からは毎月、カフェスタイルの情報交換に採血、PEG管理などの演習を加えた「Re・フレッシュCafe」という取り組みも行っています。約5時間のコンパクトな内容ですが、参加者の再就職率は思いのほか高く、参加して「早速働いてみよう」と思う人もいれば、その後でA、Bコースを受講する人もいます。会場は大阪府看護協会の桃谷センターが中心ですが、一般の施設を借りることもあります。2月にはあべのハルカスにある「街ステーション」で行いました。オープンな会場で、気軽に参加できる企画を、これからも拡大していきたいと思っています。
看護が必要とされる場が広がっています
医療機関以外からの求人も多いとうかがいました。

高橋 再就業支援講習会を行っているような施設は働き方が見えやすいのですが、「その他にもいろんな働き方があるよ」ということを伝えたいと考えています。
たとえば特別支援学級などの学校看護師が不足しています。医療依存度の高いお子さんが普通の幼稚園、小学校へ進みたくても進めない。小児を看ることができる看護職が圧倒的に少ないのです。学校勤務は春休み、冬休みもあって、子育て中の看護職の労働条件としてはぴったりだと思いますが、認知度が低いうえ、技術面への不安もあって人が集まりません。教育委員会からの相談を受けて、実際にナースセンター経由で就業に至った例がありますが、現在も募集中です。
児玉 大阪府看護協会が発行している「おおさか看護だより」という冊子で特別支援学級やCRC(臨床研究コーディネーター)として働く看護職のインタビューを掲載したところ好評でした。CRCは定員割れしていたところが紹介後は定員増になったそうです。
高橋 要は「そういう職場があるのを知らない」ということなのです。他にも精神科デイケア、放課後デイサービス、コールセンター、スポーツクラブ、介護タクシー同乗、看護学生の実技指導、保育所・幼稚園など、看護が必要とされる場が広がっています。普段スポットの当たらないこういった仕事の場も、どんどん紹介していきたいと思います。
ちなみに平成27年度の再就業支援講習会受講者の就業先は、病院41%、診療所23%、福祉施設15%、訪問看護10%、その他11%でした。
ただし、規模の小さい施設は、全般的に入職時のオリエンテーションや技術指導が不十分で、個人の経験に依存している場合が多いという問題もあります。これから看護協会としても、教育体制、労務管理、人材育成についての協力が重要だと考えています。
いずれにしても「就業者を支えます」というメッセージがあれば一歩踏み出せると思うのです。様々な職場とそれを支える私たちの存在を「見える化」していくことが、これからの役割だと思っています。
潜在看護職へのメッセージをお願いします。

喜多 必ずその人に合った職場があると信じています。以前働いていた勤め先を短期で辞めた方が、お子さんが大きくなり「また働きたい」とセンターに相談に来られました。驚いたことにその施設の看護部長さんが「よく覚えていますよ。あの時は短期間だったし仕事を覚えるのが大変だったでしょう。ぜひもう一度来てください」と温かく迎えてくださった。管理者の考え方ひとつでこんなふうに復職できるのかと感動しました。そういう「人と人のつながり」を支えていきたいと思っています。多様な職場だけでなく、勤務曜日やダブルワークといった多様な働き方の要望も踏まえてご紹介します。
児玉 ナースセンターは特別な場所ではありません。皆さんと同じ看護職が看護職のために働いている場所です。ぜひ遠慮なくお越しください。ナースセンターはお金をいただいていないので、中立的な立場でご紹介できると思います。初めは電話をかけるのも気が引けるかもしれませんが、ナースセンターでは高齢の方や心の病気で離職されたような方の相談にも親身に対応しています。どんな状況の方でも気兼ねなくご連絡ください。普段はセンターで対応しますが、月4回、連携している大阪東、堺、枚方、阿倍野のハローワークに出向いての相談も受けています。
高橋 多様な場所で看護職が求められる時代になりました。看護職がいるかいないかで施設の質が違ってきます。医療技術の進歩は早いため、いったん現場を離れると「もう戻れない」と考えてしまいがちですが、看護の根幹は同じです。医療依存度の高い患者さんにも、寄り添う気持ちを持っていれば対応できます。じっくりと時間をかけて患者さんに寄り添う――そんな看護を目指して免許を取った方は多いでしょう。今こそやりたいことができる時代なのです。一歩踏み出して働き始めてください。そのための支援を私たちは考え続けます。
2017年4月に大阪府看護協会本部は桃谷センターへ移転します。こちらは現在の場所(ナーシングアート大阪)より交通の便が良く、ナースセンターも現状の3~4倍の広さが確保できます。これまでは狭さもあって相談の際のプライバシーの確保で苦労しましたが、桃谷センターではその心配がありません。どうぞ安心して相談にいらしてください。

〒536-0014 大阪市城東区鴫野西2-5-25
ナーシングアート大阪2階
TEL 06-6964-5511
https://www.osaka-kangokyokai.or.jp/nc/
●センターの主な事業内容
1. 看護職員の人材確保及び離職者が現場に復帰できる仕組みづくり
1)離職者の潜在化の防止と就業促進
NCCSシステムによる求人施設と求職者のマッチングの増加
2)看護師等 離職時等の届出制度の周知と届出者への支援
3)再就業支援講習会
4)セカンドキャリア、ゴールドナースの活用促進
5)就職フェアの開催
2. ナースセンター・ハローワーク連携事業の推進
3. 進学相談、進路情報の提供
●センターで今一番注力している事業
・再就業支援講習会
例年、講習会受講者の就職率は70%を超え 復職に効果を発揮しています。
平成28年度は再就業支援講習会を強化し、回数を増やしました。
施設オリジナルプログラムを用いての開催であったり、Reフレッシュ café と題した交流会をハローワーク、行政と共催、百貨店などでも開催しました。
潜在看護職が参加しやすい、ニーズに応じた研修を企画実践中です。
●今後行いたい取り組み
就職フェアを新聞社と共催で実施してきた経緯があります。就職フェアは大阪市内中心部のアクセスの良い会場で開催しています。来場者は一度に複数の病院の情報を入手でき、出展病院は複数人と面談ができるなど好評を得ています。
従来のフェアに加えて、中小規模の医療機関等が参加しやすい環境の整備と地域の潜在看護職を対象に「働く場所が拡大している」こと等、多様な働く場や働き方を提案することを目的に地域版看護職就職フェアを企画します。
●離職者へのメッセージ
平成28年度から就職活動 再就業支援の場「Reフレッシュcafé」を毎月オープンし、最近のお仕事事情や就職活動準備のための情報交換の場として好評を得ています。さらにハローワーク、行政との共催、百貨店などなど未就業の看護職のそばで『大阪府ナースセンター』はつながりを持ち、ほっとできる場をご用意しています。
●その他のアピールポイント
大阪府ナースセンター事業所は 4月から新体制にて機能強化をめざし、桃谷センターに移転準備中です。
