香川県ナースセンターでは就業支援コーディネーターが専用の携帯電話を持ち、人の縁を大切にした看護職のサポートに努めています。香川県看護協会会長の中村明美さん、常任理事の田中邦代さん、ナースセンター職員の曽根美沙さん、就業支援コーディネーターの辻まち子さん、加藤浩子さん、臼杵百合子さんにお話を伺いました。

求職者が就業支援コーディネーターに気軽に相談できる環境を整えているそうですね。

「ずっとサポートし続けることが役割だと思っています」と話す就業支援コーディネーターの辻まち子さん

 就業支援コーディネーターは1人ずつ専用の携帯電話を持っていて、相談に見えた方には「何かあったら気軽にここへ電話してください」と番号をお伝えしています。最初は「本当にいいのですか?」と驚かれますが、求職者だけでなく再就職していった方からも、この携帯電話を通して悩みを打ち明けられることが多いのです。
 長電話になることもありますが、「いざとなれば電話できると思うから心強い」と言ってもらえたとき、この仕事ならではの喜びを感じますね。再就職を見届けるだけでなく、その先もずっとサポートし続けることが就業支援コーディネーターの役割だと思っています。

「携帯電話でつながることで一人で考え込むことがなくなります」と話す就業支援コーディネーターの加藤浩子さん

加藤 再就職して一生懸命に頑張っているけれど周囲の人になかなか認めてもらえない、「頑張ってるね」と言ってほしいと相談されたこともありました。職場の人にはもちろん、親しい人にはかえって話しにくいことであっても、私たち就業コーディネーターへのホットラインがあることで気持ちがスッとして、一人で考え込むことなく問題解決に至ることがあります。
 職場環境は離職の決断に大きな影響を及ぼします。人間関係の難しさに悩む看護職は少なくありませんが、そうしたときには何かアドバイスすることよりも、まずは話を聞く姿勢が大切だと考えています。相談者は話しているうちに直面している問題を再確認できたり客観視できたりして、落ち着いて対処できるようになっていきます。特に新卒で入職した看護職では、その傾向が顕著です。

「新卒看護職は理想と現実のジレンマに陥りがちです」と話す就業支援コーディネーターの臼杵百合子さん

臼杵 入職して年数を経た看護職の場合は、「自分のやりたい看護が明確に見えてきて、他の職場に興味を引かれた」「結婚、子育て、介護などで生活環境が変化しても働き続けたい」というように、前向きな気持ちが離職・再就職の理由となっていることが多いです。
 一方で新卒で入職した看護職では、「自分の適性や能力への不安」が離職理由の圧倒的多数を占めています。
 新卒看護職は、学校や実習で学んだ知識と現場とのギャップや、時間に追われる臨床の厳しさから、理想と現実のジレンマに陥って精神的な負担を覚えがちです。また、親御さんの希望や「友人が行くから」といった自身の希望ではない理由で、大規模な急性期病院に就職を決める学生も多く、そうした入職者が悩みを抱えている場合は職場の看護管理者とも相談しながらフォローをしますが、最終的に少し規模が小さい病院に転職して、いきいきと働けるようになった方もいます。

香川県看護協会会長の中村明美さんは「様々な方からの相談に応えられるよう準備しています」と話す

中村 当センターの就業支援コーディネーターは、東讃・高松、中讃、西讃の3地域をそれぞれが担当し、互いに情報を共有しながら活動しています。その地域で働いたことのある看護管理経験者や、看護学校の教員経験者なので、様々な方からの相談に応えることができます。就業支援コーディネーターと県内各地の病院の現役看護職で構成されたナースバンク委員会も定期的に開催し、情報交換を行っています。
 また当センターの紹介で再就職した方については、原則として就業から半年後に再就職先に出向いて、様子を確認するようにしています。こうして再就職先を訪問することは、看護管理者とナースセンターのつながりを深めるためにも、常に最新の情況を把握して新たな求職者へ正確な情報を提供するためにも重要だと考えています。
 さらにハローワークとも密接に連携していて、高松、丸亀、観音寺のハローワークに就業支援コーディナーターが出向いてサテライト相談を行っているほか、ナースセンターにはハローワークと同じ条件で求人情報が検索できるパソコンが10台設置されています。

看護職の再就職を後押しする研修について教えてください。

「看護力再開発講習会ではコミュニケーション技術も学べます」と話すナースセンターの曽根美沙さん

曽根 「看護力再開発講習会」は2日間の病院見学実習を含む1週間のプログラムです。
 看護の動向、医療事故防止、感染管理、薬物療法についての講義に加えて、病院勤務の臨床心理士からコミュニケーション技術を、ハローワーク職員から就職活動の流れやマナーを学ぶ時間も設けてあります。核家族化が進んで高齢者や子ども相手のコミュニケーションに戸惑う看護職も増えているため、そのイロハを学んでもらう機会が必要ですし、就職活動における自己アピールの方法や履歴書の書き方の講義も具体的で役に立ったと好評です。
 講義に加えて看護技術演習では、経管栄養法や胃瘻、導尿などの生活援助技術、採血や自己血糖測定などの検査援助技術、褥瘡予防や急変時対応などの診療・処置援助技術と、盛りだくさんの内容を学ぶことができます。短い期間なので、事前に参加者の声を聞いて、希望する技術にウエイトを置いた内容になるよう講師の先生にお願いしています。
 そして病院見学実習は、再就職後の業務に対応することを見据えて、基本的に受講者が希望する病院で実施します。
 最終日には個別就職相談を行いますが、その場で再就職先が決まらなくても継続的に支援することで、20年、30年とブランクがある方でも再就職に結び付いた実績があります。

「参加者に思いを自由に話してもらうナースCaféはとても好評でした」と話す常任理事の田中邦代さん

田中 2017年度からは「ナースCaféキャリアレインボー」を始めました。1回目と3回目は入職1年目の看護職を対象に、2回目は離職中・就業中の看護職を対象として開催しました。参加者に思いを自由に話してもらう機会としています。
 お互いに胸の内を話すことで、「皆も自分と同じように悩んでいる」「乗り越えなくてはならない壁があるのは自分だけじゃなかった」と感じられ、誰もが晴れ晴れとした顔で帰っていったのが印象的でした。職場での教育とは別に、もっとソフトなサポートも必要ではないかと考えて企画したのですが、やはり人と人とが打ち解けるには一緒に食べたり飲んだりするのが一番です。実際、元茶道部だという参加者がたててくれた抹茶やコーヒーを飲みながらにぎやかで楽しい時間を過ごすことができ、大好評でした。
 当初は2回開催の予定だったところ、参加者から「忘年会も企画してほしい」というリクエストがあり、3回目はボランティアで落語を披露してもらったり、会長自らぜんざいを作って振る舞ったりという異例の展開となりました。とても好評だったので来年度も継続予定で、私たちも楽しみにしています。

中村 医療現場ではつらいことやハッとすることも多くあって、頑張っているからこそちょっと一息入れたいときもありますよね。香川県ナースセンターは温かい雰囲気を大切にしながら、これからも看護職の皆さんをサポートしていきたいと思っています。昨年開設した「かがわナースナビ」(http://kagawa-kango.com/n_navi/)にもタイムリーな情報や話題を掲載しているので、ぜひご覧になって下さい。



香川県ナースセンター

〒769-0102 香川県高松市国分寺町国分152-4
       香川県看護協会 看護研修センター2階
TEL:087-864-9075
http://kagawa-kango.com/nc/

●センターの主な事業内容
1.ナースバンク事業
・無料職業紹介、就業の斡旋
・ハローワークでの求人・求職相談(3カ所)
・看護力再開発講習会の開催
・ナースカフェ(ナースCaféキャリアレインボー)の開催
・看護職員合同就職説明会、就職フェアの開催
・ナースセンターニュースの発行(年2回)
・ナースセンター・ハローワーク連携事業連絡調整会議
2.訪問看護推進研修
3.看護の心普及事業
・ふれあい看護体験
4.ナースセンター調整推進事業
・ナースセンター事業運営委員会

●センターで今一番注力している事業
・3人の就業支援コーディネーターが各地区を担当し、求人・求職相談を実施。月1回、コーディネーター連絡会を開催し、情報交換を行っている。
・2017年度より「かがわナースナビ」を開設し、タイムリーな情報や話題を掲載できるよう努めている。
・ナースカフェ(ナースCaféキャリアレインボー)を年3回開催予定。入職1年目の新人看護職や離職中・就業中の看護職を対象とし、就業支援コーディネーターやナースバンク委員が中心となり、悩みや思いを話し、情報交換ができる場としている。

●今後行いたい取り組み
・ナースカフェの実施回数の増加、対象の拡大(ブランクナース、プラチナナースなど)。
・ナースセンターとハローワークによる就職フェアの実施場所の増加(東部・西部地域での開催:2回/年)。

●離職者へのメッセージ
・一人ひとりがどこかで必要とされています。家庭も大切にしながら、自分に合った職場を一緒に見つけ、専門職として看護に携わりながら自分らしい生き方ができるよう応援します。
・離職期間を充電期間ととらえ、有効活用について一緒に話しませんか。
・離職を考えたときの思いや本人の求める職場希望をしっかり傾聴し、相談に応じます。

●その他のアピールポイント
・ハローワーク求人情報をオンライン提供している(利用できるパソコンを10台準備)。
・個人情報を厳守しながら、求職者に寄り添った相談・支援を展開している。ナースセンターのネットワークを最大限に活用して、求人・求職者を支援している。
・各コーディネーターが求職者の悩みや相談に応じ、求職者がそれぞれの人生の中で看護職をしながら頑張れるよう支援している。
・気軽に相談に来られるような対応に努めている。
・県やハローワークと密接な連携を取っている。
・毎月の連絡会で就業支援の方法・あり方について意見交換することで、お互いの情報を共有し、次の対応の参考にしている。

ハローワークと同じ条件で求人情報が検索できる

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