愛媛県ナースセンターは、学生からセカンドキャリアまで様々な世代の「看護職になりたい」「看護職として働き続けたい」という気持ちを支えています。特に力を入れている取り組みについて、愛媛県看護協会会長の大西満美子さんと、常務理事でナースセンター担当理事の立川妃都美さんに伺いました。

届出者へのファーストタッチに気を配っているそうですね。

「今後はさらにアクティブになり皆さんの要望に即した支援を実現していきたい」と話す愛媛県看護協会会長の大西満美子さん

大西 最近は「知らない番号からの電話には出ない」という方が多く、普通に電話しても反応がないことがしばしばあります。そこで固定電話以外に専用のスマートフォンを用意し、まずはショートメールで「何かお困りのことや就職のことをお考えでしたらぜひナースセンターへ」といった定型文を送っています。その後に電話をかけることで、つながりやすさが格段にアップしました。その後、さらにナースセンター便りなどの案内を郵送するという3段階でのコンタクトを実施しています。
 電話をかけた段階で就職相談に入ることもありますが、実際に来所しての相談が多いですね。ナースセンターまで来るのが大変という方は、県内8カ所のハローワーク(四国中央・新居浜・西条・今治・松山・大洲・八幡浜・宇和島)に担当者が赴いての就職相談も実施していますから、ぜひ足を運んでみてください。

立川 2016年度の届出状況を調査したところ、20代の届出が最多で、次いで30代、両者を合わせると全体の6割以上を占めていることが分かりました。届出者が多いのは若い世代の方たちなのです。この世代の離職率が高い理由は主に2つあって、結婚や出産を機に退職することと、最初に就職した病院が合わずに辞めてしまうことです。
 学生時代に実習で訪れることもあり、新卒看護職たちの多くは大病院をはじめとする実習病院に就職します。しかし、必ずしも大病院の雰囲気や働き方が自分に合うわけではありません。私たちは「職場になじめなかった」という看護職に対して「あなたに合うこんな職場もあるよ」と提案し、できるだけ多くの方に働き続けてもらうことを目指しているのです。若い世代の届出が多いということは、挫折を経験しても「またどこかで働きたい」という思いが残っていることの表れでもあるはずです。

給付型の就業チャレンジ研修に力を入れているそうですが、どのようなものですか。

大西 2017年7月からスタートした「実践型就業チャレンジ研修」は県からの補助金事業で、自分が働いてみたい職場で指導を受けながら業務を体験し、1日当たり5500円の給付金を受け取れるというものです。病院以外にも、診療所や介護老人保健施設、社会福祉施設、訪問看護事業所など、様々な105施設から自分の興味のある研修先を選択することができます。研修期間は、5~14日の間(1日4時間)と幅を持たせてあるため、受講者の希望に沿って設定が可能です。
 この研修のいいところは、実際の職場での体験業務を通して、求職者と求人施設がお互いを分かり合えることにあります。就職してから「こんなはずじゃなかった…」という事態に陥ることを防ぎ、両者が納得した上でスムーズに働き始めることができるのです。この研修では当センターの担当者も一緒に求人施設に出向き、求職者が聞きづらいことを代わって質問したり、業務の内容や施設の雰囲気が本当に求職者に合った職場かどうかをチェックしたりもしています。

立川 従来のキャリアとはまったく違う分野に挑戦したいという方や、離職期間が長く自信が持てないという方にも、この研修はお勧めです。実際、60歳代の看護職がこの研修を通して介護施設への就職を決めたケースもあります。その方はブランクが長く再就職を迷っていたのですが、この研修の案内を受け取って「私でもできるかしら…」と相談に見えたのです。以前は一般病院に勤めていたのですが、もう少し時間的に制約の少ない働き方を希望していたこともあり、まったく未知だった介護施設へ挑戦することにしたそうです。研修を受けた結果、「ここなら大丈夫そうです!」と自信を取り戻し、無事にその施設へ就職していきました。現在は、週3日のペースで仕事を続けています。

様々な求職者のニーズに応えるため、ほかにもいくつかの研修があるそうですね。

大西 再就業支援事業として、ほかに3種類の研修を用意しています。

潜在看護師講習会

 1つ目は、講義と施設見学の両方ができる「潜在看護師講習会」で、じっくりと4日間かけて基本的な看護の知識(実技演習を含む)をおさらいするほか、求職活動のノウハウ、パソコン研修なども行います。施設見学の日程は1日だけですが、午前は病院見学、午後は福祉施設や訪問看護ステーションの見学というプログラムなので、両方を比較して自分に合った職場を考えたいという方には最適です。

復職支援実技研修

 2つ目は「復職支援実技研修」で、特にブランクがある潜在看護職が不安に感じやすい実技について、シミュレーターを使って集中的に学べます。救急看護認定看護師が講師となり、採血や静脈注射、フィジカルアセスメント、吸引といった、再就職する前におさらいしておきたい内容を一通り押さえることができます。毎月第3火曜日に行われていますが、どうしてもその曜日に来られないという方には可能な範囲で個別対応もしているので、気軽に相談してくださいね。

 3つ目は「セカンドキャリアを活かして生涯現役を目指そう!」と題した講演会・交流会です。対象は主に55歳以上の看護職で、現役の方も未就業の方も大歓迎です。2017年度には、東予地区・中予地区・南予地区それぞれで1回ずつ開催しました。社会保険労務士による年金と生活設計についての講義があったり、既にセカンドキャリアを歩んでいる先輩から体験談を聞いたり、参加者同士でコーヒーを飲みながら交流したりといった内容です。「会長さんの体験談が面白かった」「私も死ぬまで働かないと!」などと大盛り上がりで、もっと話したかったという要望が多数寄せられました。

学生だけでなく社会人からも多くの進路相談が寄せられると聞きました。

ナースセンター担当理事の立川妃都美さんは「できるだけ多くの方に働き続けてもらうことを目指しています」と話す

立川 進路相談というと「学生向け」というイメージが私たちにもあったのですが、実際にガイダンスなどを行っているうちに、社会人からの相談も多いことが分かってきました。2017年度に社会人向けの「えひめで看護師になりませんか」というチラシを作成してスーパーやコンビニなどに置かせていただいたり、市の広報誌に掲載していただいたりしたところ、2017年12月までに11件の相談が寄せられました。その内容も「今は別の職業に就いているけれど、もともとあこがれていた看護職に挑戦したい」「介護職のパートとして働いているけれど、シングルマザーなので看護師資格を取って正規職員として働きたい」など様々。それぞれの方の事情を把握しながら、学費を支援する制度や給付金などについてご案内し、看護職を目指す気持ちを応援しています。

大西 もちろん、学生向けの進路相談にも力を入れています。最近では、保護者を対象にしたチラシを作成し、学生本人に向けたチラシとともに県内の小学校・中学校・高等学校すべてに配布しました。仕事のやりがいはもちろんのこと、就職率の高さや安定した収入など待遇面を含めて、看護職の魅力をアピールしています。愛媛県でも看護職不足は顕著ですが、これからの時代はますますその力が必要とされるはずです。当センターとしても、将来的に看護職を目指す若者が増えてくれるよう、全力を注いでいきたいと考えています。

愛媛県で再就職を目指す看護職の皆さんにメッセージをお願いします。

立川 県内の病院等のワークライフバランス(WLB)に対する意識は、どんどん変わってきています。看護協会が取り組むWLB推進ワークショップを通して、「時間外労働を減らした」「住宅支援を始めた」といった労働環境の改善を図った施設は少なくありません。新たに敷地内へ保育園を設置したところもあります。当センターとしても病院訪問などを通して積極的に労働環境の改善を働きかけ、様々な背景を持った看護職が辞めずに働き続けられる職場作りに努めています。

大西 2017年3月にリニューアルした当センターのウェブサイトはとても分かりやすい内容になっていると思うので、まずは気軽にのぞいてみてください。これまでも県内の看護職を支えてきたナースセンターですが、今後はさらにアクティブになり、皆さんの要望に即した支援を実現していきたいと思います。大切な資格を生かして生涯輝き続けられるよう、ナースセンターも変わり続けます。

愛媛県ナースセンター

〒790-0843 愛媛県松山市道後町2-11-14
       (愛媛県看護協会内)
TEL:089-924-0848
https://www.ehime-nursec.jp/

●センターの主な事業内容
1.看護職の無料職業紹介
2.潜在看護師講習会
3.訪問看護ステップⅠ研修会
4.再就業支援事業
・「復職支援実技研修」
・「セカンドキャリアを考えて働き続けよう研修会」
・「実践型就業チャレンジ研修」
・届出制度(とどけるん)
5.看護職県内定着事業
・看護職合同就職説明会
・看護のこころ普及事業
・将来の看護職獲得のためイベント参加
・進路相談
・地区別タウンミーティング

●センターで今一番注力している事業
・再就業支援事業での給付型「実践型就業チャレンジ研修」:求職者・求人施設双方の「こんなはずではなかった」を回避するために、ナースセンター職員が見学から研修、就業までを対面で個々に対応する。研修を修了した求職者には、給付金が支払われる。
・進路相談:従来の小中高生向けの職業ガイダンスに加えて、社会人経験者向けに「資格を取る」という視点でも対応する。
・届出者への「ファーストタッチ」のさらなる充実。

●今後行いたい取り組み
・ナースセンター職員が求人施設訪問を行い、ナースセンターの周知、とどけるんへの全員届出等について協力依頼を実施する。
・求職票やナースセンター便り等の見直しを行い、効果的・効率的な仕組みを構築する。これにより、職員の情報共有と求職者へのさらなるアプローチを図りたい。

●離職者へのメッセージ
休職期間が長くなると、次、働くときになかなか一歩が踏み出せません。あなたの今の生活スタイルに合った働き方で働き続けましょう。ナースセンターは、そんなあなたの力強い応援団です。

●その他のアピールポイント
皆さんの要望に即した支援を実現していくために、愛媛県ナースセンターはアクティブに変わり続けます。

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