長崎県ナースセンターでは、本所の諫早と、支所がある長崎、佐世保(長崎県看護キャリアセンター相談所)の計3カ所の拠点に加えて、長崎県看護キャリア支援センターなどと協力しながら看護職の支援に当たっています。その状況について、長崎県ナースセンター部長の丸本キヌ子さん、相談員の宮地瑞恵さん、栗田ひとみさん、高橋正美さん、長崎県看護キャリア支援センター長の平田俊子さんにお話を伺いました。

どのような方からの相談が多いのでしょうか。

丸本 子育て世代を中心に、「いずれは働きたい」と考えて来所する方が多いですね。実際には一口に「いずれ」と言っても、「子どもが生まれたばかりなのでしばらくしてから」という漠然とした方もいれば、「末っ子が小学校に入る来年から働きたい」という具体的な方まで様々です。

ナースセンター部長の丸本キヌ子さんは「その人に合った施設での実習が出来ると、より就職に結びつきやすくなります」と話す

 まずは、いつ頃からどのような働き方をしたいのか、具体的にお話を伺うところから相談がスタートします。多くの方にとってキーワードとなるのが「保育園」と「夜勤」。誰にどのくらい子どもを預けられる環境が整っているのか、そして夜勤を含めてどのくらいの時間働けるのかなどをまず具体的に整理していきます。

高橋 私は長崎支所を担当しているのですが、県内の登録者の40%ほどを抱える長崎地区でも状況は同じですね。勤務可能な時間を考えるというのは本当に大切なことで、たった30分の違いで紹介できる施設の数が大きく変わってきます。例えば「9時から13時まで働けます」という方も、8時半から働くことができれば、その時間にオープンするクリニックなどが選択肢に入ってくるわけです。そのため、保育園の送り迎えの時間や家族の協力などを考慮しつつ、できるだけ条件を広げられないか検討します。
 一方で、求人施設に対して「お子さんが小学校に入るまでは午前中勤務限定ですが、入学以降はフルタイムが可能です」「週3日であればこの条件で働けます」といった、求人票にはない条件の交渉をすることも私たちの役目です。いわゆるワークシェアという形で、2人で1人分の業務を担当できないか提案することもあります。求職者と求人施設の、双方の気持ちをくみ取りながら調整を図るように心がけています。

丸本 このようなやり取りが出来るのは、就職後にきちんとフォローを入れているからです。特に離職期間が長かった方や、技術的に少し不安がありながらも施設に受け入れていただいた方などについては、再就職1カ月後と3カ月後を目安に担当者へ連絡を入れ、「○○さんは今、どうされていますか?」と確認しています。今後はナースセンター経由で就業した方と半年以内に面談が出来るようにしたいと考えています。
 また当センターは、届出制度がスタートする前から施設訪問に力を入れていました。病院やクリニックはもちろんのこと、看護学校、福祉施設、訪問看護ステーションなども訪問し、それぞれの勤務体系や職員の充足状況などを把握しています。これまで133施設を訪問し、看護職の再就職支援に活かしています。

「往復はがきを使った現状把握を定期的に行い、繋がりを保っています」と話す相談員の栗田ひとみさん

栗田 もう一つ、当センターでは往復はがきを使って求職者や求人施設の状況を定期的に把握しています。特に若い世代の方は知らない番号からの電話には出ないことが多いのですが、往復はがきを送ってみたところ意外にも多くの返信をいただきました。アナログな方法ですが、「友人の紹介で就職できました」と求職者の元気な文字が書かれていたり、「大至急、看護師さんが1人欲しいです!」と求人施設の担当者からメッセージがあったりと、それぞれの置かれている状況がとてもよく伝わってきます。

再就職を支援するための研修にはどのようなものがありますか。

平田 私がセンター長を務める佐世保市にある長崎県看護キャリア支援センターは、2015年に長崎県が立ち上げた施設で、シミュレーターが充実しているのが特徴です。ここで行う未就業看護職を対象とする6日間の「看護基本・技術集合研修」では、注射、採血、口腔ケア、褥瘡処置、体位変換、急変時対応といった各1日ずつの演習に無料で参加できます。この演習は偶数月に開催され、各週の水・木曜日にそれぞれのテーマの演習が行われます。1年に6回、計36日間とかなり頻繁に開催していますが、それでも定員オーバーすることがあるくらいの人気です。無料の託児サービスも始めました。

「勤務可能な時間を考えるというのは本当に大切なことです」と話す相談員の高橋正美さん

高橋 諫早市のながさき看護センターでも、再就職に当たって知っておきたい知識を凝縮した講義形式の「看護基本集合研修」(2日間)を実施しています。しっかり学びたいと考える求職者の中には、「看護基本集合研修」で知識を習得した後、「看護基本・技術集合研修」で技術を確認するという方も少なくありません。

宮地 さらに、「医療施設における体験研修」(3日間)を併せて受講するのがお勧めです。従来の研修先はいわゆる大病院だけだったのですが、「様々な機能を持った施設だとは思うけれど、ただ感心して終わってしまう」といった受講者の声を受けて、もう少し規模の小さな病院や福祉施設にもご協力いただくようにしました。現在は、受講者が希望する再就職先を事前に聞いておき、それを踏まえて研修先を調整するようにしています。

丸本 知識だけではなく、その人に合った施設での実習が出来ると、より就職に結びつきやすくなります。
 ナースセンターを訪れた方にこれらの研修を案内したり、申し込みの方法を説明したりする一方で、研修を受けた方の「どのようなかたちで再就職したいか」という相談にも応じています。

離島も含めた、地域ごとの支援について教えてください。

宮地 長崎支所に加えて、佐世保の長崎県看護キャリア支援センターにはナースセンターの支所があります。また、諫早、大村、島原、長崎、佐世保のハローワークにはナースセンターの出張相談窓口を設置しています。

長崎県看護キャリア支援センター長の平田俊子さんは「看護基本・技術集合研修は定員オーバーすることがあるくらいの人気です」と話す

平田 私が担当する県北地区では、訪問看護や福祉施設への再就職を希望する方が比較的多い印象です。未経験だと不安が大きいかもしれませんが、1年間以上の同行訪問(指導看護師の同行を受けて利用者の居宅を訪問する)を経て着実に成長し、今では一人前の訪問看護師として活躍中の方もいます。自分の年齢や経験を考えてあきらめるのではなく、ぜひ私たちに相談してほしいですね。

栗田 看護職が不足しがちな離島や島原地区に関しては、I・Uターン支援にも力を入れています。「海が好きだから離島に住みたい」「空気のおいしいところで家族の療養をしながら働きたい」といった理由で長崎県への移住を希望する方のお話を伺いながら、必要に応じて就職支援を行うことで、少しでも看護職が不足している地域へ貢献できればと思います。

丸本 ナースセンターが作成した 「しまで活躍するナースたち」という冊子には、下五島・上五島・対馬・宇久・壱岐という5つの島の概要や、どんな医療施設でどのように看護職が活躍しているかが分かりやすくまとまっています。ぜひ参考にしてほしいですね。この冊子は、県内すべての看護学校のほか、全国のナースセンターにもお届けしています。

ベテラン世代の看護職に対するサポートについてはいかがでしょうか。

[どんなセカンドライフがあるのか、まずは知ることから始めてほしいと思います」と話す相談員の宮地瑞恵さん

宮地 ナースセンターでは、50歳以上を対象としたセカンドライフセミナーを開催しています。年金や雇用保険などについてハローワークの職員が教えてくれるほか、同じような悩みを抱える方と交流できる絶好の機会です。特にセカンドキャリアを考えるときは、「仕事を通した生きがい」に目を向けることも大切です。ボランティアに携わるなどして地域に貢献している方も少なくありませんから、看護職としての経験を活かして、どんなセカンドライフがあるのか、まずは知ることから始めてほしいと思います。50歳代以上の方が働く場合でも、それぞれの事情を踏まえたキャリア支援を行っているので、遠慮なく相談してください。お待ちしています。





長崎県ナースセンター

〒854-0072 長崎県諫早市永昌町23-6
       ながさき看護センター1階
TEL:0957-49-8060
https://nagasaki-nurse.or.jp/page-nursecenter01.html

●センターの主な事業内容
1.就業に関する相談支援
・eナースセンター(NCCS)の求人・休職登録の促進
・施設訪問による求人相談・就業者への支援
・ハローワーク出張相談(5カ所)
・求人・求職の現状把握(6カ月に1回、往復はがきによる)
・求職者の施設見学からマッチングへの支援
・看護職員合同就職説明会
・移住サポートセンターとの連携による支援
2.離職時等の届出制度に関する支援
・届出制度の広報・周知
・復職意向の確認後の相談と施設見学からマッチングへの支援
3.再就業支援
・長崎県看護キャリア支援センターとの連携(再就業支援研修情報提供および就業支援)
4.進路相談および看護業務のPR事業
・進学相談会
・高等学校進路指導担当教諭との懇話会
・県内看護職養成校の学生へのナースセンターの役割と利用方法、届出制度についての説明会
5.「看護の心」普及事業
・ふれあい看護体験の実施(支部活動による)
・看護の出前授業
6.看護職員離職者調査・看護職員需要調査
7.ナースセンターだよりの作成と配布
8.離島看護情報誌の発行と配布
9.セカンドライフセミナー開催

●センターで今一番注力している事業
・施設訪問による施設状況の確認・調整、就業者の状況確認およびナースセンターと届出制度の周知・登録促進
・県内看護職養成校の学生へナースセンターの役割と利用方法、届出制度についての説明を実施
・看護職員不足施設・定着困難施設(強化地区として島原地域)の就業支援

●今後行いたい取り組み
・入職6カ月以内の再就業者との面談、求人施設との連携
・求職登録者の交流会

●離職者へのメッセージ
「なんでんよかけん、いっぺん話ばしてみましょ!」
 離職された方、ブランクがあるけれど復職をお考えの方、子育て中だけれどいずれは復職したいとお考えの方など、気軽にナースセンターへ来てお話をしてみませんか? あなたの希望する時期に、適した職場と働き方を見つけるお手伝いをいたします。現場経験のある相談員が、あなたのお話をじっくりと伺います。

●その他のアピールポイント
・本所と2つの支所による3地域での連携した運営と活動
・看護キャリア支援センターとの連携による再就業支援研修の情報提供と研修修了後の就業支援

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