都心へのアクセスも良いことから、ファミリー層の居住者が多い神奈川県。今、子育てをしながら看護の仕事を継続するための選択肢の1つとして、訪問看護師への関心が高まりつつあるといいます。神奈川県看護協会に、訪問看護師養成研修の実際や参加者の背景、そして就業相談や職業紹介所であるナースセンターの役割について話をうかがいました。

目を輝かせてそう話す参加者の姿が印象的でした。神奈川県看護協会が主催する「平成27年度 訪問看護導入・見学体験研修」終了後のひとコマです。



この研修は2015年には神奈川県内各所で7回開催されました。12月に川崎市で開催された研修会には2日間で約40名が参加し、半数は現在就業中、そして半数は再就職を考えている方々でした。
子育てしながら働きたい
神奈川県は他県と比べて訪問看護師養成研修の参加者が多いとうかがいました。

佐藤 神奈川県は都心へのアクセスが良いので子育て世代も多く、出産のために仕事を離れた人が復職する際に、短い時間で働ける訪問看護ステーションを選択肢に入れるケースは増えています。また比較的子育て支援策が充実しており、お子さんができても仕事を続けていこうとする方も多いのではないかと思われます。こういった方々が研修に参加して、自分に適性があるかどうかを確認したいのでしょう。
もちろん背景には、地域包括ケアシステムの体制が整えられていく中で、県内に訪問看護ステーションの数が増えてきたことがあります。訪問看護に関する教育研修の必要性が高まっており、新たに訪問看護ステーションを立ち上げた病院がスタッフの研修参加を申し込んでくることもあります。
参加者の反応はどうでしょうか。
佐藤 研修参加者に終了後アンケート調査を行っていますが、概ね反応は良好です。「足の踏み場のない利用者宅の状況に戸惑った」といった正直な感想もありましたが、「言葉かけなどのコミュニケーションが重要だと思った」「家族へのアプローチも大切だと思う」「スタッフ間の連携が早いと感じた」といった、訪問看護をポジティブに捉えた感想が多数を占めています。しかしそれが直接就労につながるまでにはまだ至っておらず、今後の課題だと思っています。皆さんこれからのキャリアを、じっくりと考えていらっしゃるのでしょう。
今年新たな試みとして、参加者の上司や家族にアンケートを行い、研修後の参加者の様子を聞きました。参加者の子どもたちから「お母さんが綺麗になった」「外に出て人に会うので、髪の毛をきちんとするようになった」といった声が寄せられたことも印象的でした。知識を得た時ややりがいを見つけた時、人は生き生きとしてきますが、それを最も身近にいる家族が感じとっているようです。
わかり合える感を大切にします
神奈川県ナースセンターで力を入れていることはありますか。

廣島 相談員が相談力をつけていくことでしょうか。
実は、ここ数年で相談員のメンバー構成が大きく変わりました。ベテランスタッフが定年で一挙に辞めたため、新しい人材を入れる必要があり、あえて中堅スタッフを採用しました。相談現場にも急速にIT化が進んでおり、パソコン技術を求められるようになり、必要に迫られていたことでもありますが、相談者と同年代の考え方を得られるメリットもあると感じています。相談では、年齢のことよりも相談者の主訴を正しく「気づき」聞き取れるかどうかが重要です。「わかりあえる感」ともいえるでしょうか。神奈川県ナースセンターには、本所と支所を合わせて現在7名の相談員がいます。30代から60代まで各世代が揃っています。
また、神奈川県の場合、多岐に及ぶ求人施設があり、看護職は移動型といいますか、職場を変えて働く人も多いのです。他を知りたい、いろんな体験をしたいという気持ちがあるようです。相談員は、教員や管理職、子育てや介護の経験者もいますので、生活と仕事を考えてより広い視野で相談者の悩みを共有できていると思います。
私自身は、この仕事を通してキャリアコンサルティングの理論と技術に辿りつきました。看護職の経験だけでは、「生涯を通して看護の仕事を考える」多様な相談内容に対応しきれないと思ったからです。ただ、他の相談員にも同じ方法論を押しつけるつもりはありません。それぞれが自分なりの相談方法を見出すことが望ましいと思っています。相談で困った事例を話し合うこともありますが、その時は「私はこう考える」ということを伝えるに止めています。相談の技術が画一化するより、多様であったほうがいいと思うからです。
悩みを抱えながら働いている人へのメッセージをお願いします。
廣島 若い方は自分の能力や適性、職場の人間関係で悩んでいることが多いのですが、私たちにご相談いただくことで、当事者だけでは難しい問題解決の糸口が見出せることもあると思います。相談者とプリセプターとの関係でうまくいかない場合、相談を重ねる中で「もう少し上の立場の人や友達、学校の先生等に相談してみよう」と関係性の輪が広がってゆき、解決に至る場合もあります。
私たちは「転職斡旋」ではありません。キャリアの継続という視点を大切にしています。すぐに辞める話に持っていくのではなく、まずはいま何が問題なのかを話してもらいます。そのうえで求人票の見方を説明し、自分の雇用条件を確認していただきます。他の施設に移った場合にどのような問題が生じうるかも伝えます。
困難を乗り越え、自身のキャリアを形成するための前向きな転職であればいいのですが、後ろ向きのままの転職は本人にとって決してプラスにならないと思います。職場を移る場合も、今抱えている問題と折り合いをつけてから次へと進むことが大切だと考えています。
ナースセンターは第三者の相談機関ですので、安心していつでも相談にいらしてください。

神奈川県ナースセンター
〒231-0037 神奈川県横浜市中区富士見町3-1TEL 045-263-2101
https://www.kana-kango.or.jp/nursecenter/
●センターの主な業務内容
看護職対象の無料職業紹介事業、就業中のご相談、進路相談、復職支援研修の企画・運営
●センターで今一番注力している事業
近々の情報では、
1. 最近の話題となる内容を研修として企画する「トピックス研修」
たとえば1月のテーマは「看護師等届出制度の活用と再就職ナースを迎える環境づくり」です。参加対象は、看護管理者だけでなく看護職・事務職の方も。講師には、公益社団法人日本看護協会 労働政策部長 橋本様、HKNエグゼクエティブディレクター 看護コンサルタント 北浦様をお招きします。
2. ナースセンターに登録している求人施設を対象に、ナースセンターの業務と実績報告をする「求人施設対象の説明会」
たとえば2月の内容は、ナースセンター職員から事業実績と届出状況を説明し、かながわ労働センター湘南支所の武山様を講師にお招きし労働契約を結ぶ際のポイントについてお話いただきます。
通年では、
【ナースセンターを知っていただき、利用していただくこと、研修に参加してくださることに、特に力を注いでいます!】
併せて、ホームページをご覧下さい。
●今後行いたい取り組み
ナースセンターの活動全般を動画等で紹介したいと思っています。また、求人票を読み込む際に必要な用語集等を作成し、求人施設の方も、求職者も「わかる求人票!」を目指します。また、看護学生には、ナースセンターでの仕事探しを勧め、社会のしくみを理解し、就職活動を自分の力で行ってほしいと思っています。
●離職者へのメッセージ
離職は人生において転機だと思います。この時に、自分の人生と仕事についてじっくり考えることが大切だと思います。「看護」とは何か、行き詰ったら話に来てください。子育て・介護をしながらどうやって働こうか迷ったら一緒に考えていきます。どこで働きたいか、どんな働く場があるか、わからないことがあるときは必要な情報を探しお伝えします。
もし、苦しくなって看護から離れた場合も、焦らずゆっくりと吐き出しに来てください。
看護職は専門職であり、経験を積み上げることを求められますが、働き方は様々です。いつの日か人生を振り返ったとき、この選択で良かったと思えるよう、今回の転機を大切にしてほしいと思っています。職員一同で応援してます。
●ナースセンターから一言
神奈川県は、自然豊かな山・海に恵まれ、歴史ある観光名所が幾つもあり、都心へのアクセスもよく、温暖で生活しやすい地域です。また、特徴のある病院・施設等も多くあり、自己を成長させながら生涯を通し看護を続けることが可能です。神奈川県ナースセンターの相談員は、年代が30歳・40歳・50歳・60歳台と幅広いこと、管理職・教員等の経験者や、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格を有する者がおります。
また、本所と支所が連携してより地域に密着した情報を提供できることも特徴です。神奈川県への就職が「あこがれ」などの漠然としたもので始まったとしても、働き続けるうちに「故郷」となり「看護の礎」となっていくでしょう。是非、一度お越しください。




